サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
アメリカ大統領選
japanknowledge.com
ジャパンナレッジNEWS 辞書に関係あることも ないことも ごった煮でお届けする 公式だけどオフィシャル感のない スタッフブログ的サイト。登録いただければ メールでもお送りします。 ジャパンナレッジ会員ならナレッジサーチャー(ジャパンナレッジ簡易検索)使えます。 マガジンハウスから刊行されている雑誌『BRUTUS』の公式サイトで興味深い記事を見つけました。 それは、図書館情報学研究者の小林昌樹氏のガイドによるベテラン図書館司書の情報の集め方について書いた記事。 さまざまな質問が集まる図書館のレファレンスサービスにおいて、司書がどのように情報を集めるのか。そこには、自分自身の仕事や生活にも活用できそうなヒントがありました。 なかでも、インターネットでの検索への向き合い方について書かれた箇所は誰しもが気をつけたい内容。 長年、図書館情報学では「Wikipediaを使ってはいけない」という指導が
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 まずは問題から。 A 「そっけない」「あじけない」「いくじない」「かぎりない」 B 「あどけない」「せわしない」「せつない」「はしたない」 AとBに掲げた語はすべて末尾に「ない」が付く形容詞だが、Aの語例の「ない」とBの語例の「ない」は別のものである。その違いを答えなさい。 このような問題が学校のテストで出題されることはまずないであろうが、答えは、Aの「ない」は名詞に付いて否定の意を含む形容詞をつくる語であり、Bの「ない」は性質・状態を表す語(多く、形容詞語幹・形容動詞語幹など)に付いてその意味を強調し、形容詞をつくる接尾語である。 つまり、Aはすべて名詞+「無い」で形容詞となった語ということになる。 「そっけない」の「そっけ」はおもしろみやあいその意味、「
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 変なタイトルを付けたが、痴漢行為について、法律的な解説をしたいわけではない。 『日本国語大辞典(日国)』で「痴漢」を引いてみると、以下のような2つの意味がある。 (1)愚かな男。ばかもの。たわけもの。 (2)女性にみだらな行為をする男。 「痴」はおろか、「漢」は男という意味で、「痴漢」という語は、本来は(1)の意味で使われていた。それがのちに(2)のような、女性に淫らな行為を働く男や、そのような行為をいうようになった。その意味がいつ頃から広まったのかという話をしたいのである。 なぜそのようなことを考えたのかというと、NHK Eテレの番組の某ディレクターさんからこんな話を聞いたからだ。彼は、「痴漢」という語が(2)の意味で使われるようになったのには、作家の大江
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 以下の語の意味をご存じだろうか? 「愚痴(ぐち)る」「事故(じこ)る」「告(こく)る」「きょどる」「サボる」「パニクる」「タクる」「ディスる」「チンする」「お茶する」 いずれも先日文化庁が発表した2013(平成25)年度の「国語に関する世論調査」で、意味の広まり具合の調査が行なわれた語である。これらは「~る」「~する」を伴って動詞化した語だが、世代によって聞いたことがあるかどうか、あるいは実際に使うかどうかの差はかなり大きいのではないか。 かくいう私はというと、「ディスる」などは最近になって知った語であった。だが、さすがと言うべきか、新語に強い『大辞泉』にはすでに載っている。意味は「否定する。批判する。けなす。」とある。 「ディス」は英語「ディスリスペクト(
1963年に刊行がスタートした『東洋文庫』シリーズ。日本、中国、インド、イスラム圏などアジアが生んだ珠玉の作品の中から、毎週1作品をピックアップ。 1000文字のレビュー、そしてオリジナルカルテとともに、面白くて奥深い「東洋文庫」の世界へいざないます。 2020年の夏のことだが、アイヌ団体が、地元の川でのサケ捕獲は先住民族の権利だとして、国と道を相手取って漁業権を認めるよう求め提訴した。ところがこのニュースに対し、ヤフコメで批判的な書き込みが多いことに驚いた。きっと日本が行ってきたアイヌ人に対する仕打ちも歴史も知らないに違いない。無知とは罪である。 とエラソーに構えてみたものの、私自身がまったく何も知らなかったことに、本書『サハリン島占領日記1853-54』を読んで気づかされた。 本書は、1853年にロシア軍がサハリン島南岸の地を占領した事件をつぶさに綴った、遠征隊隊長の日記である。この日
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 ご飯やみそ汁などを器に盛ることを、何と言っているであろうか。 「よそう」だろうか、あるいは「よそる」だろうか。他にも「盛る」や、「つぐ」と言っているという方もいらっしゃるかもしれない。 だが、今回話題にしたいのは「よそう」か「よそる」かということである。 私のまわりにも、「ご飯をよそる」と言っている人がけっこう多い気がする。しかし、本来の言い方は「よそう」である。漢字で書くと「装う」、つまり服装や用具などを整えて身支度をするという意味が原義である。現代語では衣服などの場合は「よそう」が変化した「よそおう」を使うことが多いが。 「よそう」は、飲食物を整え、用意するという意味から、飲食物を器に整えて盛るという意味になり、さらに飲食物を器に盛るという意味に変化して
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 いきなりで恐縮なのだが、表題の「破落戸」を何と読むかと聞かれたら、皆さんはすぐに答えられるであろうか。 正解は、「ならずもの」または「ごろつき」である。かなりな難読語だと思う。 なぜ「破落戸」と書いてそう読むのかというと、もともと中国に「破落戸」という語があって、それに日本で「ならずもの」「ごろつき」という読みをつけたからである。「破落戸」は諸橋轍次(もろはし・てつじ)の『大漢和辞典』にも「はらくこ」の読みで載せられている語で、「ごろつき」「ならずもの」という意味とともに、中国明代に完成したとされる『水滸伝(すいこでん)』の例文などが引用されている。この『水滸伝』は、日本では宝暦7~寛政2年(1757~90年)に岡島冠山(かんざん)編訳と伝えられる『通俗忠義
ジャパンナレッジは日本最大級のオンライン辞書・事典です。 80種類以上の辞書・事典・叢書をパソコンやスマホからご利用できます。
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 日本では、1873年(明治6)に太陽暦が施行され、昼夜を24時に等しく分けた太陽時による定時法が用いられることになった。それ以前の時刻法は「不定時法」と呼ばれるもので、昼(夜明けから日暮れまで)と夜(日暮れから夜明けまで)をそれぞれ6等分して、2×6で一日を12刻としていた。ただしこの場合、季節によって昼夜の長さが異なるため、昼と夜とで一刻の長さは一定しない。 昼夜の長さは異なっていても、一日は12刻なので、一日や一昼夜を「二六時(にろくじ)」といい、さらに終日、一日中を意味する「二六時中」ということばが使われていた。 ところが1873年以降、一日が24時間になったために、新たに「四六時中」ということばも生まれた。「二六時中」の「二」を「四」に変えたわけだ。
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 「ぞっとする」といえば、恐怖などを感じて、からだが震え上がるという意味である。たとえば、太宰治の『ヴィヨンの妻』(1947年)に 「女のほそい声が玄関で致します。私は、総身に冷水を浴びせられたように、ぞっとしました。」 とあるように使う。この場合は、泥酔した夫が帰宅したあとに、「ごめん下さい」という女の声が玄関でしたので、「私」が動揺したり恐怖を感じたりしたという意味であろう。 ところで「ぞっとする」に対して、「ぞっと」と「しない」が結びついた「ぞっとしない」という言い方がある。「ぞっと」を否定しているわけだから、恐ろしくないという意味のように思えるかもしれないが、実はそうではないのである。 たとえば、『日本国語大辞典』で引用されている夏目漱石の『草枕』(1
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 「得る」は、「える」と読んだり「うる」と読んだりするが、どちらが望ましい読みなのだろうかという質問を受けた。 結論から言うと、どちらでも間違いではないのだが、「える」の方が現代語的で、「うる」の方が古語的だとは言える。ただ、個別に見ていくとどちらか一方を使った方がすわりがいいという場合もありそうだ。 たとえば「利益を得る」「承認を得る」「病を得る」などは、「える」の方がふつうで、「うる」と読むと違和感を覚える人も多いかもしれない。 だが、「得るところが多い」「上司の承認を得る必要がある」などやや改まった表現の場合は、「うる」の方がすわりがいいと考える人の方が多いのではないだろうか。さらに、動詞の連用形に付いて、「できうるかぎりの努力」「交渉の時間切れもありう
ジャパンナレッジとは、日本有数の百科事典や辞書類が持つ膨大な知識情報を収録した、インターネットデータベースです! 言うなれば、「インターネット上の図書館」です。 普通にインターネット上で検索しただけでは分からない事柄でも、ジャパンナレッジを利用すれば、調べられないことは無いと言っても過言ではありません。 ジャパンナレッジは百科事典や国語辞典のみならず、日本語や英語その他様々な言語の辞典から、史実を深く掘り下げた歴史事典、「東洋文庫」などの叢書まで、80種類以上を超えるコンテンツを有しています。 総項目数・約218万、総文字数・約16億のデータの中から調べたい事柄を一瞬で検索できる。それがジャパンナレッジなのです。 また、ただ単語を検索しただけでは終わらない、「知識を広げる為のツール」も多数用意しております。 ジャパンナレッジは、あなたの知的好奇心を満たすための最高のツールなのです。 ご利用
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 第49回の「辞書引き学習」のすすめで紹介した、中部大学深谷圭助准教授の講演会の会場で、「辞書」と「辞典」はどう違うのかという質問を受けた。確かに深谷氏は「辞書引き学習」と言っていて、「辞典引き学習」とは言っていない。その理由はご本人にお聞きするしかないのだが、ほとんどの国語辞典は、「辞書」「辞典」を同義語として扱っている。 『日国』を引いてみると、「辞典」は「辞書のやや新しい呼び方。」とある。ではどれほど新しいのかというと、やはり『日国』で確認できる「辞書」の最も古い例は、幕末に刊行された蘭日辞書『和蘭字彙(オランダじい)』で、これは安政2~5(1855~58)年の成立である。 一方「辞典」はというと、明治以後に生まれたようで、国語学者の物集高見(もずめたか
百科 日本大百科全書 改訂新版 世界大百科事典 Encyclopedia of Japan 日本語 デジタル大辞泉 日本国語大辞典(第二版) 新選漢和辞典 Web版 字通 角川類語新辞典 使い方の分かる 類語例解辞典 故事俗信ことわざ大辞典(第二版)+R 小学館 全文全訳古語辞典 数え方の辞典 日本方言大辞典+R 日本の歳時記+R 歴史・地名 国史大辞典+R 日本歴史地名大系+R 誰でも読める 日本史年表 古事類苑+R 江戸名所図会 英語 小学館 ランダムハウス英和大辞典(第2版) プログレッシブ英和中辞典(第5版) プログレッシブ和英中辞典(第4版) コウビルド米語版英英和辞典 Oxford Advanced Learner's Dictionary 10th Edition 小学館 オックスフォード 英語コロケーション辞典+R 小学館 オックスフォード英語類語辞典+R 理化学英和辞典+
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 計画などがつぶれたり、だめになったりすることを、俗に「ポシャる」と言う。「新事業は資金が調達できずポシャった」などと使う。『日本国語大辞典(日国)』によれば、徳川夢声のエッセー『夢声半代記』(1929年)の、「新宿座は一週間でポシャったのでした」(新宿座)という例が現時点では一番古いようだ。 『日国』をはじめ、ほとんどの国語辞典は、この語の見出しを「ポシャる」と「ポシャ」だけカタカナで表記している。多くの人も実際に文章の中で使うときは、「ポシャる」と書くだろう。だが、なぜカタカナで書くのかと考えたことはあるだろうか。 このように書くのは理由があって、「『ポシャ』は『シャッポ』の『シャ』と『ポ』を逆にしたものの変化した語か」(『日国』)と考えられているからであ
「匹」という漢字は、ふたつのものが対(つい)になっているものを表します。例えば、織物2反で「1匹」と数えたり、「匹敵」といえば、2つのものが互角であることを表します。なぜ動物を数えるのに対になっているものを表す「匹」を使うのでしょうか。 昔、人間にとって最も身近で生活に欠かせない動物(家畜)は馬でした。荷車を引かせたり、農耕をさせたり、人間はいつも馬の背後からその姿を見てきました。当然、馬の尻を見つめる機会も多かったため、馬の尻(しり)が2つに割れていることがイメージとして強く焼きつき、2つに割れた尻の対を持つもの、そして綱(つな)に繋(つな)いで“引く”動物、という意味ともあわせ、馬を「匹」で数えました。『源氏物語』や『今昔物語集』にも馬を「匹」で数える用例が見られます。そこから、「匹」は馬だけでなく、広く生き物を数えるのに用いられるようになりました。 一方、大形の動物を数える「頭」の歴
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 国語辞典マニアが集う、「国語辞典ナイト」というイベントがある。『三省堂国語辞典』の編纂者・飯間浩明さんを中心に、辞書の熱烈な愛好家が運営しているイベントである。その第9回の公演が今年4月に東京の渋谷であり、私もゲストとして呼んでいただいた。このイベントのチケットは発売直後に売り切れるほどの人気だと聞いていたので、辞書編集者として喜んで参加させてもらうことにしたのである。 承諾の返事をすると、しばらくしてイベントの告知内容がメールで送られてきたのだが、それを見て、驚いた。 「今回は国語辞典界の超レジェンド登場!『日本国語大辞典』編纂の神永曉さんが奇跡の出演決定です!」 とあったからである。そして、いろいろと考えさせられた。 もちろんそれは、私が「国語辞典界の超
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 今回は思い込みはいけないという話である。もちろん自戒を込めて。 みなさんは立ったり座ったりする身のこなしのことを何と言っているだろうか。「立ち居振る舞い」?または「立ち振る舞い」? 筆者は長い間「立ち居振る舞い」が正しく、「立ち振る舞い」は誤用だと思っていた。ところが、あるとき「立ち振る舞い」も国語辞典の「立ち居振る舞い」の解説に同義語として載せられていて、中には見出し語にしているものまであるということに気がついたのである。これはかなり衝撃的なことであった。自分のことばの知識なんて、まだまだだということを思い知らされたからである。 だが、そうではあっても若干の疑問は残った。「立ち居振る舞い」は「立ち居」と「振る舞い」が合わさった語で、「立ち居」は立ったり座っ
なぜ、境田さんは辞書を集めるのか? 佐藤「このイベントの前に、境田さんの自宅兼辞書ルームを訪ねてきたんですが、聞きしに勝るものでした。歩くのもままならない。全部で何冊ぐらいあるんですか?」 境田「6000点以上あります。日々、増えていますので……」 佐藤「入手困難な辞書として知られる時枝誠記編の『例解国語辞典』(注1)や『大漢和辞典』(注2)の戦前の版、中国・清代の字書『康熙字典』(注3)など、辞書に関わってきた者としては垂涎の書が並んでいました。なかでも、特に『言海』(注4)が目立ちましたが、何冊ぐらいあるんですか?」 境田「大形、中形、小形、寸珍本とあって、270冊ですね」 佐藤「正確な数値がさらっと出てくるところが境田さんらしいですね。異なる辞書を集めるならわかりますが、なぜ同じ辞書をそこまで?」 境田「ご存じの通り、『言海』は1891年に完成した日本初の近代的国語辞典です。最初は4
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。隔週月曜日にお届けします。 「森羅万象」という語が話題になった。2019年2月6日の参議院予算委員会で、安倍晋三総理が「総理大臣なので森羅万象すべて担当している」と発言したことによる。「森羅万象」の意味は、『日本国語大辞典(日国)』によると「宇宙間に数限りなく存在するいっさいの物事」ということなので、ずいぶん大きく出ちゃったなという気がしないでもない。 今回その「森羅万象」について書こうと思っているのだが、だからといってこのような発言をした安倍総理について、何か私見を述べたいと思っているわけではない。 辞書編集者として、この語の意味のこれからについて考えるいい機会を与えてくれたと思っているだけである。というのも、安倍総理の発言が大きく取り上げられてしまったが、
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 まずは以下の文章をお読みいただきたい。 「しゃべらぬじいさんの、チェーン=ストークス呼吸(大きくなったり静止したりする不規則な呼吸)を聞きながら床の上に布団をひき、じいさんの手の脈を時々取ってみながら」 この文章を書いた徳永進氏は、医師でノンフィクション作家でもある方だという。この文章は、『臨床に吹く風』(1986年)というエッセイ集による。いかがであろうか、この文章を読んで何か気になる部分はないであろうか。私はというと、「床の上に布団をひき」という部分が引っかかるのである。自分だったら布団は「ひく」ではなく、「しく」と書くはずだから。 確かに私の周りにも「布団をひく」と言っている人はいる。しかし、それは口頭語なのかと思っていたのだが、どうやらそうではなかっ
奈良時代以前には、カタカナも平仮名もまだ出来ていませんでした。古代の日本人は、漢字の音や訓をいろいろに用いて、日本語を書き記す方法を発明しました。 その用例は『万葉集』にもっとも多彩に見られます。文学を書き記すという意識があるからでしょうか。『古事記』ではヤマは「山・夜麻」だけですが、『万葉集』ではそのほかに、「八万・也末・野麻」と書いたものもあります。 『万葉集』には、「恋」は「古非」「古比」と書いたものもありますが、恋は孤りで悲しむものだからでしょう、わざわざ「孤悲」の字を用いた例がかなりあります。漢字の意味を考慮したものと言うことになります。中国にもこういう使いかたがあります。倭の女王の名を「卑弥呼」としたのには軽蔑の気持ちがありますし、イギリスを「英吉利」と書くのには敬意があります。日本製のものでは、clubを「倶楽部」と書くのも、意味を考慮した当て字と言えます。 そういう複雑な『
総項目数50万、用例数100万を収録したわが国最大の国語辞典『日本国語大辞典 第二版』(全13巻)の完全デジタル版です。 国語学・国文学の専門家にとどまらず、歴史・仏教・漢籍・民俗などの各界の権威、経済・法律などの社会科学、および動物・植物など自然科学の研究者など、3,000人以上におよぶ識者によって40年以上の歳月を費やし完成したものです。 言葉の成り立ち、意味や用法の変遷、言葉の歴史など、最新の研究成果に基づいた「語誌」欄、それぞれの使用地域を表示した「方言」項目、さまざまな説が一覧できる「語源説」欄など、言葉への多彩なアプローチが可能となりました。 ジャパンナレッジ版では、『日国』の情報をより活かすための多種多様な検索を用意しました。詳細検索では見出し・全文はもちろんのこと、用例・歴史的仮名遣い・ 方言・語誌・語源説など範囲を限定して検索できるほか、項目種別や品詞、ジャンルなど見たい
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 標題のような質問を受けた。質問者は、「一倍」は数学だと×1なので、「人一倍がんばる」というのは、結局人と同じではないのか。人よりもがんばるのなら、正しくは「人二倍」ではないのか、というのである。 『日国』によれば、「一倍」は「二倍の古い言い方で、ある数量にそれと同じだけのものを加えること」とある。一番古い用例は奈良時代のものなので、かなり古くから2倍の意味で用いられていたことがわかる。江戸時代には、親が死んだときに返却する約束で借りる「一倍銀(いちばいがね)」というものがあったらしい。もちろん借りた額だけ返せばいいという、慈善事業のようなものではなく、2倍にして返さなければならない相当な高利貸であったようだ。 無理に理屈を付ければ、「倍」そのものに2倍の意味
国内でも珍しいクラシック音楽中心の音楽専門図書館、東京文化会館音楽資料室。 都内でも音楽にかかわる図書館をいくつか見かけますが、広く一般に無料で公開しているところは珍しいように思います。 いまだに現役で活躍するカード目録、約4万枚もあるLPや東京文化会館で行なわれた全公演のプログラムといった貴重資料など、気になるポイントが多い図書館です。 音楽のありようが多様化するなかで、伝統的な音楽を扱う図書館にも何か変化があるのでしょうか。ぜひ東京文化会館音楽資料室の紹介をお願いいたします! 東京文化会館の音楽資料室は音楽専門図書館であり、誰でも利用できる公共の図書館でもあります。収集やレファレンスにおいて、専門的な知識は果たして必要なのか? 図書館のこれからをどう思い描いているのか? 前回に引き続き、司書の遠藤淑恵さん、篠原智子さん、高関瑶さんにお話をうかがう2回目。 東京文化会館外観。4階に音楽資
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 「栃尾のあぶらげ」というのをご存じだろうか。栃尾とは新潟県長岡市の地名だが、ここの「あぶらげ」は通常のものよりも大きく、長さは20センチほど、厚さも3センチもある。生揚げ(厚揚げ)と見まがうほどの「あぶらげ」である。だが、味や風味はまぎれもなく「あぶらげ」で、中に納豆やネギ味噌を挟んで焼いて食べることが多いのだが、私はただ焼いたものに刻みネギとおろし生姜で醤油をかけるシンプルな食べ方が好きである。 と、今回は日本語とはまったく関係のない食べ物の話で始めてしまったのだが、「栃尾のあぶらげ」は「あぶらあげ」ではなく「あぶらげ」と呼ばれていることに注目してほしかったのである。 「あぶらげ」は漢字で書くと「油揚」。今でこそ薄く切った豆腐を油で揚げたものを言うが、元来
ドイツ連邦共和国の政党。略称AfD(アーエフデー)。2013年2月、ヨーロッパ債務危機、ユーロ危機を背景に、新自由主義的な経済学者ルッケBernd Lucke(1962― 。ハンブルク大学教授)らを中心に、脱ユーロ、ドイツ・マルク復帰を掲げて誕生した。党名は、首相メルケルがユーロ支援以外に「選択肢はない」と述べたことへのアンチテーゼ。結党には、ルッケら市場原理主義的な経済学者に加え、中小企業の経営者や、保守系・民族主義団体のメンバーがかかわった。2013年9月の連邦議会選挙では4.7%を得票。善戦といえるが、5%阻止条項により議席獲得は逃した。その後、2014年のヨーロッパ議会(欧州議会)選挙では7.1%を得票し7議席を獲得、旧東ドイツ諸州の州議会選挙でいずれも10%前後の票を得た。 結党直後から経済学者グループと右翼グループとの党内闘争が絶えなかったが、2015年7月の党大会で右翼グルー
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 前回、「悩ましい」は問題の多い語だと書いたが、「悩ましい問題」という表現に違和感を持った方も大勢いらっしゃったのではないだろうか。本来この語は「官能が刺激されて心が乱れる思いである」という意味で使われることが多かったのだが、近年になって「どうしたらいいのか悩んでいる状態である」という意味が生じているのである。 文化庁が平成14(2002)年1月に行なった「国語に関する世論調査」でこの語の実態を調査している。それは、「a 悩ましい目つきで誘惑する」「b AかBかの選択は悩ましい問題だ」の言い方について、どちらを使うかという調査内容であった。結果は、aだけが39.1%、bだけが22.4%、abどちらもが9.1%というものであった。 各社の国語辞典を引いてみると、
辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。 知人から、こんな質問を受けた。小説を読んでいたら「ひとりごちた」という表現を見つけた。終止形は「ひとりごちる」だと思われるが、手もとの辞典には載っていない。そんな語は存在するのだろうか。 その時は、それは「ひとりごつ」という古語の四段活用の動詞で、独り言を言うという意味である。古語なので、「ひとりごちる」という終止形はおかしいと答えた。 だが、少し気になることがあったので念のためにいくつかの国語辞典を引いてみた。すると、口語の上一段活用動詞「ひとりごちる」を見出し語として掲げている辞典があるではないか。これにはいささか衝撃を受けた。筆者は今までこの語を古語の「ひとりごつ」だと考えていたし、実際に編集に関わった国語辞典でも「ひとりごつ」で見出し語を立てていたか
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『辞書・事典検索サイト | ジャパンナレッジ』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く