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理化学研究所(理研)光量子工学研究センター テラヘルツイメージング研究チームの保科 宏道 上級研究員はテラヘルツ(THz、1THzは10の12乗ヘルツ)[1]照射が細胞膜の相転移[2]を誘起する現象を発見しました。 本研究成果は、今後のTHz周波数利用の安全性評価や、THz波のバイオ・医薬応用に貢献すると期待されます。 保科上級研究員は、THz波の生体影響のメカニズムを解明するため、THz波照射下の細胞膜を対象に、細胞膜分子の拡散係数の測定や、脂質二重膜[3]の相状態の観測を行いました。その結果、0.1~0.3THzのTHz波の照射が、細胞膜を構成する脂質二重膜を秩序相[4]から無秩序相[4]へと「融かす」作用があることや、細胞膜の拡散速度が速くなることを発見しました。 本研究は、科学雑誌『Scientific Reports』オンライン版(4月29日付)に掲載されました。 背景 THz波
理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター脳型知能理論研究ユニットの磯村拓哉ユニットリーダーは、あるクラスの神経回路の力学系、統計的推論、チューリングマシン[1]の数理的表現が同値であること、すなわちこれらの概念の間に三重等価性があることを数理解析により明らかにしました。 本研究成果は、統計的推論やアルゴリズム的情報処理の神経基盤への理解を進め、ヒトや動物の知性の理解に貢献することが期待されます。 生物の知能を特徴付けることは、挑戦的で重要な課題です。しかし、知能情報処理の三大理論である、神経回路モデルの動きを表す力学系的な描像(びょうぞう)、自由エネルギー原理[2]などが提唱する統計的推論に基づく脳モデル、そして基本的な計算モデルであるチューリングマシンは、これまでほとんど独立に扱われてきました。 今回、磯村ユニットリーダーは、これら三つの概念の間に三重等価性があることを数理的に示しまし
YouTubeの理研公式チャンネル「理研チャンネル」に新しい動画を掲載しました。 2024年のノーベル賞は、AI関連の受賞が相次ぎ大きな反響を呼びました。物理学賞では、人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的発見と発明に関する業績で ジョン・J・ホップフィールド 博士とジェフリー・E・ヒントン 博士が受賞しました。その業績の源流には、甘利 俊一 栄誉研究員・元脳科学総合研究センター長をはじめとした、日本における数理脳科学者たちの功績もあります。 本動画は2024年12月に理研脳神経科学研究センター(CBS)が開催した、ノーベル物理学賞解説セミナーを再編集したものです。 ぜひご覧ください。 甘利俊一「人工知能と数理脳科学」-2024年ノーベル物理学賞に関する特別講演 「私たちは二つの知能システムを持つに至った。人工知能と自然知能(脳)である。二つの歴史的な発展を述べるととも
理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター 意思決定回路動態研究チーム(研究当時)の岡本 仁 チームリーダー(研究当時、現 知覚運動統合機構研究チーム 客員主管研究員)、松股 美穂 研究員(研究当時)らの共同研究グループは、マウスの脳にある「手綱核(たづなかく)-脚間核(きゃくかんかく)神経回路[1]」が社会的闘争で勝敗を分ける重要な役割を担っていることを発見しました。 本研究成果は、全ての動物に共通して見られる社会的上下関係を巡る闘争の制御機構の解明につながるだけでなく、鬱(うつ)やひきこもりなどの精神状態の脳科学的理解や治療法の開発に貢献すると期待されます。 岡本 チームリーダーらはこれまでにゼブラフィッシュを使って、脳の手綱核から脚間核に至る2本の神経回路のどちらが強化されるかによって、社会的上下関係を巡る闘争で、勝者になるか敗者になるかが強く影響を受けることを発見しています。 今回
理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター 意思決定回路動態研究チーム(研究当時)の岡本 仁 チームリーダー(研究当時、現 理研名誉研究員、知覚運動統合機構研究チーム 客員主管研究員)、半田 剛久 大学院生リサーチ・アソシエイト(研究当時)らの共同研究グループは、不安を誘発するような環境で活性化してマウスの不安様行動[1]を抑制する神経回路を発見しました。 本研究成果は、不安障害[2]などの精神疾患において過剰な不安を生じるメカニズムの理解や治療法の開発に貢献すると期待されます。 不安はヒトをはじめとする動物が潜在的な危険を回避するために重要ですが、不安が過剰になると環境の変化に柔軟に適応することができなくなってしまいます。 手綱核(たづなかく)-脚間核(きゃくかんかく)の神経回路[3]は、不安や恐怖などの動物の情動に関与することが知られています。過去の研究から、この神経回路はさらに細かな
理化学研究所(理研)は、スーパーコンピュータ「富岳」[1]の次世代となる新たなフラッグシップシステム(開発コードネーム:「富岳NEXT」)注)について、神戸市中央区港島南町のポートアイランド(第2期用地)にある理研神戸地区隣接地に整備することを決定しました。「富岳NEXT」を設置する建屋を新たに建設する予定です。文部科学省HPCI計画推進委員会「次世代計算基盤に関する報告書 最終取りまとめ」[2] (2024年6月)で示された、「京」から「富岳」移行時のようなシステム入れ替えによる「端境期」を極力生じさせないという観点や、既存の「富岳」関連施設を活用するとともに、施設の増強を行うことが、合理的かつ経済的であると判断しました。 計算科学研究センター(R-CCS)では、理研神戸地区において「富岳」に加え、「最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)[3]」構想で進める「AI for Scien
理化学研究所(理研)開拓研究本部 東原子分子物理研究室の久間 晋 専任研究員、金沢大学 理工研究域数物科学系の三浦 伸一 教授らの国際共同研究グループは、ナノサイズの液体水素が低温で超流動[1]になることを液体水素中の分子の回転を利用して発見しました。 本研究成果により、超流動という量子力学に由来する現象への理解は、非常によく研究されてきたヘリウム「原子」から、水素「分子」の世界へと広がります。 国際共同研究グループは、水素分子[2]をヘリウム液滴[3]という絶対温度0.4Kのナノサイズ環境に閉じ込め、メタン分子をさらに液体水素に埋め込むことに成功しました。メタン分子[4]の回転運動をレーザーにより検出し、分子が「こま」として回転する様子から、水素の超流動性を決定しました。 本研究は、科学雑誌『Science Advances』オンライン版(2月21日付:日本時間2月22日)に掲載されまし
理化学研究所(理研)生命機能科学研究センタ ー生体機能動態イメージング研究チーム(研究当時)の崔 翼龍 チームリーダー(研究当時、現 分子標的化学研究チーム 客員主管研究員)、根山 広行 研究員(研究当時)、健康・病態科学研究チーム(研究当時)の渡辺 恭良 チームリーダー(研究当時、現 分子標的化学研究チーム 客員主管研究員)、大阪大学 医学部附属動物実験施設実験動物学の宮坂 佳樹 助教らの共同研究グループは、薬理作用のない偽薬(プラセボ)[1]の投与により実際に痛みが和らぐプラセボ鎮痛効果[1]の神経生物学的な実態を明らかにしました。 本研究成果は、医療現場におけるプラセボ効果の合理的な活用に理論的な根拠を与え、治療効率の向上、薬剤の副作用・耐性や依存の予防などに貢献するだけでなく、"心と脳"問題を神経科学で理解するきっかけを提供すると期待されます。 今回、共同研究グループは、陽電子放射
理化学研究所(理研)は、スーパーコンピュータ「富岳」[1]の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備を2025年1月から開始します。理研は、「次世代計算基盤に関する報告書 最終取りまとめ」[2](2024年6月文部科学省HPCI計画推進委員会。以下、「最終取りまとめ」という。)において、新たなフラッグシップシステムの開発主体とされており、2024年度(令和6年度)総合経済対策および2024年度(令和6年度)補正予算に基づいてプロジェクトの開始を前倒しするものです。 我が国の科学技術・イノベーションが世界をリードし、社会や産業を発展させるためには、これまでのスーパーコンピュータで追求してきたシミュレーション性能だけではなく、シミュレーションとAIの両者において世界最高水準の性能を達成し、さらにシミュレーションとAIとが密に連携して処理を行いつつ、科学上の仮説生成や実証を含むサイエ
理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター 理研CBS-トヨタ連携センター(BTCC)社会価値意思決定連携ユニット(研究当時)の赤石 れい ユニットリーダー(研究当時)らの国際共同研究グループは、グループサイズの変化が人々の協力行動に影響を与えるメカニズムを解明しました。 本研究成果は、人類がどのようにして大規模な協力的社会を形成できるのかという根本的な問いの理解に貢献すると期待されます。 これまでの研究ではグループサイズ(人数)が大きくなるほど、一人の相手との関係悪化のコストが相対的に小さくなり特定の相手との相互作用の頻度も低下するため、将来の協力による報酬が得られにくくなることから協力行動が減少すると考えられてきました。 今回、国際共同研究グループは、グループサイズの増加に伴い協力行動が増えるという従来の知見と矛盾した現象について、その神経認知メカニズムを明らかにしました。この実験では
理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター 理研CBS-トヨタ連携センター(BTCC)社会価値意思決定連携ユニット(研究当時)の赤石 れい ユニットリーダー(研究当時)らの国際共同研究チームは、オンラインコミュニケーションの利用が若者の精神的健康に与える影響について、日本で初めての経験サンプリング法[1]を用いた大規模かつ日常生活レベルでの科学的調査を実施しました。その結果、ソーシャルメディアの閲覧など一対多のオンラインコミュニケーション[2]は孤独感を増加させる一方、メッセージの直接的なやり取りなど一対一のオンラインコミュニケーション[3]は幸福感を増加させることが明らかになりました。ただし、ソーシャルメディアやその他のスマートフォン(スマホ)アプリの利用などのデジタル利用の増加が対面コミュニケーションの時間を減少させ、これが間接的に精神的健康に悪影響を与えていることが分かりました。 本
理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター 比較コネクトミクス研究チームの播磨 有希子 基礎科学特別研究員(研究当時)、宮道 和成 チームリーダーらの共同研究グループは、マウスを用いて、副腎と腸管の機能をそれぞれ制御する交感神経[1]の異なるサブタイプ[1]が脊髄の中に存在することを発見しました。 本研究成果は、交感神経による全身の臓器機能の制御に関して、臓器やその機能ごとに専用のサブタイプが用意されているという新しい概念を提案し、将来的に臓器機能の不調を原因とする疾患の治療戦略に貢献すると期待できます。 ヒトを含む動物のさまざまな臓器は、交感神経と副交感神経[1]から拮抗的(きっこうてき)な制御を受けています。これらの自律神経[1]は、全身の臓器を一斉に一方向に制御するものと捉えられており、個々の臓器に特化した精細な制御があるとはこれまで一般に認識されてきませんでした。 共同研究グルー
理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター 創発ソフトマター 機能研究グループの相田 卓三 グループディレクター(東京大学 卓越教授(国際高等研究所東京カレッジ))、程 逸人 研修生(研究当時)、平野 英司 研究パートタイマーⅡ、黃 虎彪 研究員(研究当時)らの国際共同研究チームは、強靭(きょうじん)でありながら海水中などで容易に原料にまで解離し、生化学的に代謝される「超分子プラスチック」の開発に成功しました。 本研究成果は、プラスチックの代替材料として、固体の超分子ポリマーの可能性を初めて示唆し、マイクロプラスチックによる環境汚染の抑制に貢献すると期待されます。 今回、国際共同研究チームは、食品添加物や農業用途に広く用いられている安価な生化学的な物質代謝を受ける2種類のイオン性モノマー[1]を用いて、高い物質代謝活性を持ちながら、優れた成形加工性、耐熱性、高い力学特性など、従来のプラス
2024年11月8日 理化学研究所 東京大学 科学技術振興機構(JST) 日本電信電話株式会社 株式会社Fixstars Amplify 理化学研究所(理研)量子コンピュータ研究センター 光量子計算研究チームの古澤 明 チームリーダー(量子コンピュータ研究センター 副センター長、東京大学大学院工学系研究科 教授)、光量子制御研究チームの米澤 英宏 チームリーダー、日本電信電話株式会社(NTT)、株式会社Fixstars Amplifyの平岡 卓爾 代表取締役社長CEOらの共同研究グループは、新方式の量子コンピュータ[1]の開発に成功しました。これは世界に先駆けた汎用型光量子計算のためのプラットフォームとなります。 量子コンピュータは量子力学の原理を計算に利用することで、さまざまな問題が超高速で解けると期待され、世界中で激しい開発競争が行われています。理研量子コンピュータ研究センターでも20
本年度のノーベル物理学賞が人工知能分野のジェフリー・ヒントン、ジョン・ホップフィールドの両博士に贈られたことは大変に喜ばしい。物理はもともと「物の理」を考究する学問であるが、これが「事の理」ともいうべき情報の理にまで幅を広げたのである。まさに物理は越境する。人工知能と神経回路網理論研究の源流は日本にもあり、その成果が国際的に活かされて今日のAI時代を迎えた。 ヒントン博士は多層神経回路網の確率降下学習法に始まり、ボルツマン機械、情報の統合、その他多くの画期的な仕事を成し遂げたのみならず、神経回路網を深層にすることで高度の情報識別が行えることを予見し、これに数々の工夫を加えることで画期的な成果を挙げた。人工知能の新しい道を切り開いたのである。 ホップフィールド博士は、神経回路網における連想記憶を提唱して、その容量をコンピュータシミュレーションにより導いて、この分野に多くの理論物理学者を惹きつ
理化学研究所(理研)量子コンピュータ研究センター 量子コンピュータアーキテクチャ研究チームの後藤 隼人 チームリーダーは、量子コンピュータのための誤り訂正技術を高効率化することに成功しました。 本研究成果は、誤り訂正技術によって誤りを訂正しながら量子計算を実行する誤り耐性量子コンピュータの早期実現に貢献すると期待できます。 今回、後藤 チームリーダーは、高い符号化率(レート)[1]を有する量子誤り訂正符号「多超立方体符号[2]」を提案しました。例えば、216個の物理量子ビット[3]を用いて64個の論理量子ビット[4]を符号化でき、符号化率を64/216≒30%と高くできます。また、専用の高性能な復号器[5]や符号化器[6]を開発することで、符号化率が高いにもかかわらず、符号化率が低い従来符号と同程度の誤り訂正性能を有します。言い換えると、同じ誤り訂正性能を従来よりも少ない物理量子ビット数で
理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター 栄養応答研究チームの小坂元 陽奈 基礎科学特別研究員、小幡 史明 チームリーダーらの共同研究チームは、食餌に含まれる10種類の非必須アミノ酸が個体の健康状態に与える影響をショウジョウバエ[1]を用いて網羅的に解析し、チロシンの欠乏が寿命や代謝生理に関わることを発見しました。 本研究成果は、栄養素が持つ生理機能の基礎的理解につながり、また健康寿命の延長に向けた栄養介入法の開発に貢献すると期待できます。 近年、タンパク質や特定のアミノ酸の摂取制限が、健康寿命の延長に効果的であることがさまざまな動物種で報告されています。しかし、そのメカニズムには不明な点が多くあります。特に非必須アミノ酸[2]は、体内で十分合成されるため、その摂取制限による影響については見過ごされてきました。 今回、共同研究チームは、ショウジョウバエを使った実験から、非必須アミノ酸を
理化学研究所(理研)開拓研究本部 岩崎RNAシステム生化学研究室の岩崎 信太郎 主任研究員、七野 悠一 研究員、戸室 幸太郎 大学院生リサーチ・アソシエイト、水戸 麻理 テクニカルスタッフⅠ、藤 博貴 学振特別研究員PD、河本 尚大 基礎科学特別研究員、東京大学 生産技術研究所の池内 与志穂 准教授、周 小余 特任助教らの共同研究グループは、細胞内で「翻訳[1]」を行うリボソーム[2]の数やタンパク質がつくられる速度を初めて網羅的に計測しました。 本研究成果は、高効率なRNAワクチンの設計や、神経変性疾患やがんなどの翻訳異常を伴う疾患病態の理解へとつながるものと期待されます。 メッセンジャーRNA(mRNA)[3]からタンパク質を組み立てるプロセスである翻訳は生物種間において高度に保存されたメカニズムです。翻訳ではリボソームと呼ばれる巨大な分子複合体がmRNA上の分子暗号を解読しながら、タ
理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター 時空間認知神経生理学研究チームの藤澤 茂義 チームリーダーと大内 彩子 基礎科学特別研究員の研究チームは、嗅内皮質(きゅうないひしつ)[1]において、自らの将来の位置に対して空間を格子(グリッド)状に表現するニューロン(神経細胞)を発見しました。 本研究成果は、動物やヒトにおける空間認識や未来予測の神経基盤の理解に貢献すると期待されます。 今回、研究チームは、ラットが広い環境で探索行動をしているとき、嗅内皮質において、そのラットの数十センチメートル先の将来の位置に対して空間を格子状に表現する「予測的格子細胞」を発見しました。予測的格子細胞は、進行方向に対して格子場をシフトさせることで、将来の空間情報を表現していました。予測的格子細胞は海馬のシータ波[2]と呼ばれる脳波の谷の位相[3]で活動し、他のタイプの格子細胞とともに、各シータ波の周期全体にわ
理化学研究所(理研)開拓研究本部 眞貝細胞記憶研究室の新海 暁男 上級研究員、志村 知古 テクニカルスタッフⅠ、福田 渓 客員研究員、眞貝 洋一 主任研究員らの国際共同研究グループは、さまざまな生命現象やがんや免疫不全などの疾患に関与しているDNAメチル化をコントロールする仕組みを明らかにしました。 本研究成果は、DNAメチル化制御の全容解明に向けた一歩であり、疾患治療や創薬の基礎につながるものと期待されます。 ICF症候群[1]と呼ばれる免疫不全ではDNAの低メチル化が認められ、その原因遺伝子にHELLSとCDCA7が含まれていることなどからHELLS-CDCA7(HELLSタンパク質とCDCA7タンパク質の複合体)がDNAメチル化の制御をつかさどっていると考えられてきました。しかしその分子機構は不明でした。 今回、国際共同研究グループは、両側鎖がメチル化されたDNAの複製の際に形成され
理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター 神経老化制御研究チームの綿村 直人 研究員(研究当時、現 客員研究員)、垣矢 直雅 研究員(研究当時)、西道 隆臣 チームリーダーらの国際共同研究グループは、アルツハイマー病(AD)[1]の初期病理学的因子であるアミロイドβ(Aβ)ペプチド[2]の分解酵素「ネプリライシン[3]」が、脳内神経伝達物質の一つであるドーパミン[4]によって制御されていることを発見しました。 本研究成果は、ADの予防・治療法の開発に貢献すると期待されます。 今回、国際共同研究グループは、培養細胞を用いた網羅的スクリーニングにより、ドーパミンがネプリライシンの活性を調節していることを明らかにしました。また、化学遺伝学的手法によって、腹側被蓋野(ふくそくひがいや)[5]におけるドーパミン作動性神経細胞を長期的に活性化し、ドーパミン放出を促すと、その投射先である前頭前皮質にお
理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター 栄養応答研究チームの佐久間 知佐子 上級研究員(東京慈恵会医科大学 講師(研究開始当時))、東京慈恵会医科大学 熱帯医学講座の嘉糠 洋陸 教授らの共同研究グループは、哺乳類の血液中に存在する「フィブリノペプチドA(FPA)[1]」が、ネッタイシマカ[2]の吸血を停止させる作用を持つことを発見しました。 本研究成果によって、ウイルスなどの病原体を媒介する蚊の根源的な行動である吸血の仕組みの理解や、人為的に吸血を阻害する手法の開発など新たな感染症対策への応用が期待されます。 宿主の皮膚に止まって血を吸い始めた蚊は、血中に存在する吸血促進シグナルを受容することで吸血を継続させます。多くの場合、蚊は満腹になる(腹部が膨満する)前に吸血を停止し宿主から離れますが、吸血を停止させるシグナルについてはよく分かっていませんでした。 今回、共同研究グループは、宿
理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター バイオ高分子研究チームの沼田 圭司 チームリーダー(京都大学 大学院工学研究科 教授)、シャミタ・ラオ・モレ-ヤギ 客員研究員(京都大学 大学院工学研究科 特定助教)、京都大学 大学院農学研究科の木下 有羽 助教、元木 航 助教(研究当時)らの共同研究グループは、破砕・乾燥処理した海洋性の非硫黄紅色光合成細菌[1]のバイオマス[2]が作物栽培の窒素肥料として利用可能であることを明らかにしました。 本研究成果は、既存の窒素肥料に替わる持続可能な窒素肥料の開発に貢献すると期待できます。 海洋性の非硫黄紅色光合成細菌であるRhodovulum sulfidophilumは窒素と二酸化炭素の固定が可能であり、これを破砕・乾燥処理したバイオマスは11%(重量比)もの窒素を含有しています。共同研究グループはそのバイオマスを肥料として利用し、植物がバイオマス
理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター 代謝システム研究チームの多部田 弘光 基礎科学特別研究員、平井 優美 チームリーダー(名古屋大学 大学院生命農学研究科 客員教授)の研究チームは、植物に含まれる非タンパク性アミノ酸の一種である2-アミノピメリン酸が発根作用を持つことを発見しました。この機能性アミノ酸を与えることで、幅広い双子葉植物における発根の促進やバイオマス収量の増加が期待できます。 植物の成長や環境応答の制御は、収量増加を目指した汎用性が高い農業戦略であり、以前から盛んに研究が進められてきました。近年では、植物への添加によって乾燥耐性を強化したり、収量を増加させたりすることができるバイオスティミュラント[1]を活用する農業技術が注目を集めています。 本研究では、添加実験をベースにした表現型解析の結果から、2-アミノピメリン酸が双子葉植物の根系[2]の形態変化に関与する機能性
理化学研究所(理研)計算科学研究センター(R-CCS)量子HPC連携プラットフォーム部門 佐藤 三久 部門長、量子HPCソフトウェア環境開発ユニット 辻美 和子 ユニットリーダー、量子コンピュータ研究センター(RQC)中村 泰信 センター長、萬 伸一 副センター長、大阪大学 量子情報・量子生命研究センター(QIQB)北川 勝浩 センター長、藤井 啓祐 副センター長、根来 誠 副センター長らの共同研究グループは、最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)[1]構想の一環として進める計算可能領域の拡張に向け、スーパーコンピュータ「富岳」[2]と量子コンピュータ「叡(えい)」[3]の連携利用を実証し、原理の異なるコンピュータ間の連携利用によって計算可能領域が拡大する可能性を示しました。 本成果を生かし、量子コンピュータとスーパーコンピュータの連携による最先端の計算環境の実現に寄与し、今後の科学技
理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター 数理脳科学研究チームの寺田 裕 基礎科学特別研究員(研究当時)と豊泉 太郎 チームリーダーの研究チームは、神経ダイナミクスのカオス[1]を用いて、環境状態の推定を行う脳型のベイズ計算[2]機構を提案しました。本研究成果は、脳の情報処理メカニズムの原理の解明、特に神経活動のダイナミクスを用いた推論の理解に貢献すると考えられます。また、脳を模倣したニューロモルフィック計算機[3]など人工知能や機械学習への応用も期待されます。 今回、研究チームは、神経細胞間の情報伝達を担うシナプス結合[4]の効果で生じる神経活動のカオスに着目しました。提案した脳の神経回路[5]のモデルでは、感覚入力がたとえ一定であっても、シナプス結合による神経細胞間の相互作用を使って時間とともに揺らぐ神経活動を積極的に生成します。このように生成された神経活動は微小な変動による誤差が将
理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター 発生幾何研究チームの森下 喜弘 チームリーダー、川住 愛子 学振特別研究員RPD(研究当時)、李 尚雨 技師らの共同研究グループは、hoxc12/hoxc13遺伝子[1]が、無尾両生類[2](カエル)の四肢再生時に発生プログラムを再起動させる際の重要な制御因子であることを発見しました。 本研究成果は、両生類の再生機構の理解とともに、再生能力が著しく低いヒトを含む哺乳類の再生能力を向上させる手法の探索につながると期待できます。 無尾両生類は、幼生期は手や足が切断されても元通りになるなど高い器官再生能力を有しますが、成体になると低下するというライフステージに依存した再生能力を持ちます。再生能力の経時的変化の仕組みや成体再生能力の回復方法について多くの研究がなされてきましたが、いまだ解明されていません。 今回、共同研究グループは、四肢発生時と再生時の
理化学研究所(理研)生命医科学研究センター ゲノム解析応用研究チームの寺尾 知可史 チームリーダー(静岡県立総合病院 臨床研究部 免疫研究部長、静岡県立大学 薬学部ゲノム病態解析講座 特任教授)、劉 暁渓 上級研究員(研究当時:ゲノム解析応用研究チーム 研究員; 静岡県立総合病院 臨床研究部 研究員)、東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター シークエンス技術開発分野の松田 浩一 特任教授らの共同研究グループは、大規模な日本人の全ゲノムシークエンス(WGS)[1]情報を分析し、日本人集団の遺伝的構造、ネアンデルタール人[2]およびデニソワ人[3]由来のDNAと病気の関連性、そしてゲノムの自然選択が影響を及ぼしている領域を複数発見しました。 本研究成果は、日本人集団の遺伝的特徴や起源の理解、さらには個別化医療[4]や創薬研究への貢献が期待されます。 今回、共同研究グループは、バイオバン
理研仁科加速器科学研究センター イオン育種研究開発室の阿部 知子 室長らが開発した新種のサクラを紹介します!JFC石井農場と共同開発による成果です。 理研の加速器「リングサイクロトロン」から発生する重イオンビームを照射して突然変異を誘発させてつくり出しました。 新品種の作り方(重イオンビームによる変異誘発技術) 緑がかった花を咲かせる桜「御衣黄(ぎょいこう)」(写真右)に重イオンビームを照射して突然変異を誘発させてつくり出したもので、淡黄色の花を咲かせます。その花は、黄色ピンクのふちに明黄緑色の筋が入り、咲き始める頃には淡黄緑白色で、終わりの頃に淡黄ピンクが広がり、美しい色の変化が見られます。通常、開花時期は4月中旬頃で、約2週間と長期間にわたり花が楽しめます。花の形は半八重で、4~5センチ程度の大きさをしており、元親の御衣黄と違った新品種となりました。 「仁科」は理研の加速器の父・仁科芳
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