桜の季節が巡ってきました。桜の名所、東京・目黒川のほとりの郷(さと)さくら美術館では、第3回桜花賞展が開催されています。若手日本画家30人が描いた、それぞれの桜▼爛漫(らんまん)と咲く桜、散りしきる桜、どの作品も、どこか痛みを感じさせます。桜には、過ぎ去って帰らないもの、失われてしまったものの面影が二重写しになるのかもしれません▼古代の桜は山深くひっそりと咲いていたのでしょうか。『万葉集』には〈阿保山(あほやま)の桜の花は今日もかも散り乱ふらむ見る人無しに〉(詠人(よみびと)しらず)と歌われています。『古今和歌集』の平安時代には〈見渡せば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける〉(素性(そせい)法師)と、都の町並みを彩る花へ▼そしていつしか、満開の豊かさよりも、吹雪のように一斉に散る風情が注目され始めます。赤穂浪士(あこうろうし)のあだ討ち事件を題材とした江戸時代中期『仮名手本忠臣蔵』には、「花
![きょうの潮流 2015年3月30日(月)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/8510216a130e7d5e9d1c2a4860958f4849328594/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fwww.jcp.or.jp%2Fakahata%2Fweb_img%2Fakahata-kakusan.jpg)