遠隔操作ウイルスに感染したパソコン(PC)から爆破や無差別殺人の犯行予告などが送信される事件が相次いだ。 すでに威力業務妨害容疑などで逮捕されたPCの持ち主3人が釈放されている。TBSや弁護士にメールで送られた「真犯人」を名乗る犯行声明は「警察・検察をはめてやりたかった」と動機を記した。犯人しか知り得ない事実が多く含まれており、信憑(しんぴょう)性が高い。 冤罪(えんざい)を作ることを目的とした犯罪など許されるはずがない。治安への重大な挑戦である。捜査当局には真犯人の摘発を強く求めるとともに、再発防止に向けて官民で全力を挙げてほしい。 警察は、ネット上の住所であるIPアドレスなどを根拠に3人を特定したが、それぞれ当初は関与を否定していた。 IPアドレスはPCに振られた個別の識別番号で、犯罪捜査にも役立ってきた。だが、他人のPCを遠隔操作することが可能なら、他人の指紋で犯行を繰り返すようなも
ネット上で犯罪予告を書き込んだとして逮捕された大阪府と三重県の男性2人は誤認逮捕だった可能性が濃厚だ。 パソコン(PC)が新種ウイルスに感染し、乗っ取った第三者が遠隔操作していた疑いが強い。 大阪のケースでは、海外のサーバーを経由して遠隔操作されており、犯罪予告の書き込み後に、ウイルスファイルやアクセス履歴がPCから消去されていた。三重県警の捜査でファイル名が分かり、その情報をもとに大阪府警が解析し直して感染の痕跡が確認されたという。 2人は逮捕当時から「全く身に覚えがない」と容疑を完全に否認していた。2人とも釈放されたが、大阪の男性は起訴までされた。誤認逮捕・起訴だとすれば、捜査のどこに問題があったのか。警察や検察は反省し、経緯を検証すべきだ。 所有者が知らないうちにPCを遠隔操作させるウイルスは世界で1日に十数万種類も生まれ、対策ソフトで排除できるのは一部とされる。 警察庁の片桐裕長官
日本でスパイ活動を行った疑惑が持たれている在日中国大使館の李春光・元1等書記官が、外国人登録法違反(虚偽申請)などの容疑で警視庁から書類送検された。 一時帰国した元書記官は再三の出頭要請にも応じず、不起訴になる公算が大きい。玄葉光一郎外相は中国に抗議したことを明らかにした。当然である。 今回の事件で、鹿野道彦農林水産相や筒井信隆農水副大臣らが進めていた日本の農産物の対中輸出事業に、元書記官が深く関与していた疑惑も浮上した。元書記官は鹿野氏らとしばしば接触し、副大臣室にも出入りしていた。 事業が起こされる過程での不可解な人事も問題になっている。鹿野グループに所属する衆院議員の公設秘書が、いきなり農水省顧問に任命され、8カ月後の23年7月に設立された社団法人「農林水産物等中国輸出促進協議会」の代表理事に就いている。 焦点の一つは、元書記官が鹿野氏らと接触しながら機密を入手したかどうか、その場合
中国書記官疑惑 諜報活動への警戒を怠るな(6月1日付・読売社説) 在日中国大使館の1等書記官が外国人登録証を不正使用し、ウィーン条約で禁じられた個人利得目的の商業活動をしていた疑惑が浮上した。 農林水産省高官や防衛産業関係者との接触も明るみに出ている。日本の国益に関わる機密情報の漏出はなかったのか。徹底解明が必要だ。 書記官は2007年7月、「経済担当」として大使館に赴任した。だが、本来の帰属は中国屈指の情報機関とされる人民解放軍・総参謀部第2部だったという。 書記官は、中国進出をめざす日本の企業から顧問料を受け取る“ビジネス”を手がけていた。 顧問料の振込先となる口座を開設する際、外交官の身分を隠し、以前在籍した東京大学の研究員だとする外登証を不正に更新して使用した疑いが持たれている。書記官は31日、外国人登録法違反などの容疑で書類送検された。 この間、警視庁は外務省を通して出頭を要請し
在日中国大使館の1等書記官が不正に銀行口座を開設し、ウィーン条約が禁じた商業活動を行っていたことが明るみに出た。警視庁が外務省を通じて出頭要請したが、大使館側が拒否し、書記官は一時帰国した。 書記官は外交官の身分を隠して銀行口座を開設するため、虚偽の住所などを記した申請書を東京都内の区役所に出していた。以前に使っていた外国人登録証を不正に更新した外国人登録法違反(虚偽申告)などの疑いが持たれている。一般の外国人なら強制捜査の対象になる事件だ。 外交特権を持つ書記官を逮捕することはできないが、書記官が外交官の地位を利用してスパイ活動を行っていた疑いが極めて強い。日本政府は中国当局に対し、書記官を警視庁に出頭させるよう重ねて要請すべきである。 書記官は中国人民解放軍総参謀部の情報部門出身とみられ、外交官になる前から、何度も日本に入国し、東大や福島大などに籍を置いていた。多くの政治家を輩出した松
「警察はもう信用できない」と、遺族は怒りをぶつける。そう思うのも当然だ。 千葉県警習志野署員がストーカーの被害届を先送りし、親睦旅行に行っていた問題だ。警察当局は真摯(しんし)に事件を再検証し、信用を回復してほしい。国民の信頼なくして治安は維持できない。 昨年12月、長崎県西海市で2人の女性が殺害された。千葉、三重、長崎の3県警にストーカー被害の相談をしていた女性の、母親と祖母だった。 事件後、3県警は「重大事件に発展するという危機意識が不足していた」との検証結果をまとめ、遺族に謝罪した。しかし、習志野署員が被害届の受理を先延ばしにし、北海道旅行をしていた事実は伏せられていた。その後の調べでは、県警幹部らが組織的に隠蔽(いんぺい)を図った可能性も出ている。 娘へのストーカー被害を相談する父親に、習志野署の担当者は「刑事課が一人も空いていないので、1週間待ってほしい」と答えたという。2日後、
AIJ問題 厚年基金の財務改善が急務だ(3月25日付・読売社説) 巨額の年金資産を消失させたAIJ投資顧問について、証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反の容疑で強制調査に着手した。 ハイリスクの投資を繰り返し、損失を膨らませながら、「安定的な収益が得られる」と偽って勧誘し、運用委託契約を結ばせた疑いが持たれている。集めた約1500億円の資金のうち1200億円を失ったという。 詐欺まがいの極めて悪質な行為である。刑事告発を視野に調査を進める監視委には、厳正な責任追及を求めたい。 AIJ問題では、顧客の大半を占める厚生年金基金の在り方が問われている。 厚年基金は自前の企業年金に加え、国に代わって公的年金の一部も運用し、退職者に支給する。かつては高利回りを確保できたが、近年は株安や低金利で運用益を得られず、年金の給付に必要な積立金が不足している基金が多い。 しかも9割の基金はいまだに運用目標
AIJ投資顧問が顧客から預かった年金資産の大半を消失させた疑惑は、証券取引等監視委員会が強制調査に乗り出す事態となった。 再発防止に向け、監視委は捜査当局とも連携して、AIJの責任の追及と資産運用の実態解明を徹底してもらいたい。 企業年金への不安を広げないためにも、投資顧問業や厚生年金基金に対する監督体制はもちろん、厚年基金の運営のあり方も見直されなければならない。 投資顧問会社を監督する金融庁は強制調査を受けAIJの業者登録を取り消した。当然である。 顧客から資産を預かって運用する投資顧問会社は5年前、当局による認可制から、原則自由に開業できる登録制に規制緩和された。新規参入を増やして、投資サービスの競争を促すためだった。 問題は、投資顧問会社には年1回の運用成績の報告が義務づけられているだけで、当局などの検査は人手不足もあって年15社程度、業界全体の約5%にとどまってきた点だ。実際、A
警察が試行中の取り調べの録音・録画(可視化)について、警察庁の有識者研究会が、対象範囲の拡大を盛り込む最終報告をまとめた。 おとり捜査や司法取引など新たな捜査手法については、今後も検討の必要性があるとの指摘にとどめた。可視化の論議だけが先行すれば、捜査能力の低下を招くことになる。 検察・警察が冤罪(えんざい)を作ることは許されないが、一方で治安を維持し、国民の生活を守る重大な責務がある。治安水準を落とさないためにどうすべきか。議論にはその視点が不可欠だ。 警察庁は平成21年4月から、全国の警察で、裁判員裁判の対象事件のうちでも、容疑を認めている自白事件で、調書を読み聞かせる場面を中心に、可視化の試行を実施してきた。 研究会は、否認事件も試行対象に加えるほか、逮捕直後の初期段階から可視化の対象場面を拡大することも求めている。 すべての事件を対象とする全面可視化については、委員の間でも意見が一
「私の関心と仕事は天下国家の話」で、それ以外のことは「すべて秘書に任せていた」のだという。民主党の元代表、小沢一郎被告が東京地裁で被告人質問に臨み、持論を展開した。 公判前には「法廷の場できちんと事実関係を明らかにする」と語っていたが、その姿勢は見えない。まず公判で、国民の疑問に自らの明快な答えを出すべきだ。それなくして、天下国家を語る資格はあるまい。 資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐり、小沢被告は政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で強制起訴された。 公判の最大の焦点、土地購入のために用立てた4億円の出どころについて、小沢被告は「現金で所持していたもの。両親からの相続や本の印税、40年間の議員報酬」などと述べ、ゼネコンからの裏献金受領については「(検察側の)ばかげた推論」と否定した。 これまで小沢被告は、4億円の原資について「献金」「銀行融資」「自己資金」と説明を二転三転させてきたが、
警視庁は元日早朝、逮捕監禁致死容疑などで特別手配されていたオウム真理教元幹部、平田信容疑者を逮捕した。逃亡期間は実に16年10カ月に及んだ。 平田容疑者は逮捕時、約10万円を所持していた。潜伏先については「人に迷惑がかかる」と口をつぐんでいる。 これが何を意味するか。平田容疑者の逃亡を長期間にわたって手助けした支援者や、団体の存在があったということだ。オウムの後継団体、「アレフ」や「ひかりの輪」への監視を強め、逃亡の経緯を徹底的に解明してほしい。 無差別に殺人行為を繰り返したテロ集団は、いまも生きていると認識すべきだ。 平田容疑者は、女性信者の兄である目黒公証役場事務長を拉致して死亡させた事件と、宗教学者の元自宅マンションを爆破した事件で手配されていた。 16年余の逃亡生活は、住居、資金面などを個人で支えきるのは困難だ。凶悪事件で手配されていることを承知で支援を続けた組織があったとみる方が
日米地位協定 検察審が運用改善を促した(11月26日付・読売社説) 日本の安全保障に不可欠な米軍の駐留を、より円滑で持続可能なものにするには、日米双方の不断の努力が必要だ。 日米両政府は、在日米軍で働く民間米国人(軍属)が公務中に起こした重大な犯罪について、米側が刑事訴追しない場合、日本が裁判権を行使できるようにすることで合意した。 日米地位協定は、米国軍人・軍属の公務中の犯罪について第1次裁判権は米国にあると規定している。だが、軍属は過去5年間、62件の交通事故を起こしたが、裁判にかけられた例はなく、「法の空白」と指摘されていた。 日米両政府が今回、その解消に向けて、地位協定の運用見直しで合意した意義は小さくない。 発端は、沖縄県で死亡交通事故を起こした米国人軍属を、那覇地検が3月、地位協定の規定に基づき不起訴にしたことだ。遺族の申し立てを受けた検察審査会は、5月に起訴相当と議決した。
オウム裁判終結 事件教訓に教団監視を怠るな(11月23日付・読売社説) 16年余りに及んだオウム真理教を巡る刑事裁判が終結を迎えた。 最高裁は、1995年の地下鉄サリン事件などに関わり、1、2審で死刑判決を受けた教団元幹部、遠藤誠一被告の上告を棄却する判決を言い渡した。これですべての被告の判決が確定する。 判決は遠藤被告の犯行について、「法治国家に対する挑戦」「反社会的で、人命軽視も甚だしい」と指弾した。オウム事件すべてに同じことが言えよう。 坂本堤弁護士一家殺害事件(89年)、松本サリン事件(94年)、地下鉄サリン事件――。高学歴の若者も多かったオウム信者が引き起こした凶悪事件や無差別テロでは、29人の命が奪われた。負傷者は6000人を超えた。 起訴された教団関係者は189人に上る。教祖として犯行を主導した松本智津夫死刑囚ら13人が死刑、5人が無期懲役となった。 それにしても裁判に時間が
オスロ連続テロ 排外主義をどう乗り越える(7月27日付・読売社説) 自分の偏狭な価値観を喧伝(けんでん)するために無差別テロに訴え、大勢の若者の未来を奪う。許せない行為である。 ノルウェーの首都オスロで22日、爆弾テロが起き、その2時間後には、近郊の湖に浮かぶ島で銃が乱射され、合わせて80人近くが死亡した。 爆破の標的は政府庁舎。銃口が向けられたのは、与党・労働党の青年集会の参加者だった。 両事件の容疑者として逮捕された32歳のノルウェー人は法廷で、犯行の動機を「欧州をイスラム化から救うため」と語り、テロを正当化した。 イスラム教徒移民などの受け入れを進めた労働党に責任があるという、手前勝手な論理である。 死刑のないノルウェーでは、テロの最高刑は禁錮21年だが、事件の残虐さに法改正や死刑の復活を求める声も上がっている。 容疑者は協力者の存在をほのめかしているが、捜査関係者は個人の計画的犯行
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