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滋賀県の住民29人が、福井県の関西電力高浜原子力発電所3、4号機の運転差し止めを求めた仮処分申請で、大津地裁が差し止めを命じる決定を出した。 重大事故や津波の対策、事故時の避難計画の策定などについて、「関電側が主張や説明を尽くしていない」との理由である。 原子力規制委員会は、福島第一原発事故後に厳格化された新規制基準に従い、1年半をかけて3、4号機の審査を実施した。昨年2月、合格証にあたる「審査書」を交付し、関電は今年1月に3号機を再稼働させた。 大津地裁は、規制委と同様、関電に原発の安全性の技術的根拠を説明するよう求めた。関電は、審査データを提出し、安全性は担保されていると主張した。 だが、大津地裁は「対策は全て検討し尽くされたのか不明だ」として、受け入れなかった。 司法として、関電に過剰な立証責任を負わせたと言えないか。 最高裁は、1992年の四国電力伊方原発訴訟判決で、原発の安全審査
またも驚くべき司法の判断である。これでは日本のエネルギー・環境政策が崩壊してしまう。 関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県)に対し、滋賀県の住民が求めていた運転差し止めの仮処分を大津地裁が認めた。 高浜3、4号機は福島事故を踏まえて策定された新規制基準に合格して今年、再稼働を果たしたばかりである。 にもかかわらず、運転を差し止めるということは新規制基準と原子力規制委員会の審査を真っ向から否定したことに他ならない。 仮処分は即効力を持ち、関電は運転を停止する。司法判断での稼働中の原発停止は前例がない。 関電は「到底承服できない」として、速やかに不服申し立ての手続きを行う。一日も早く取り消される必要があろう。 決定の影響は甚大だ。4月からの電力小売り自由化を目前に、関電の供給計画は全面見直しを余儀なくされ、予定された電気料金の値下げも困難になる。近畿圏での企業活動や生活にマイナスの影響が
福島県漁業協同組合連合会が、東電の浄化水放出計画を容認した。 原発建屋脇の井戸「サブドレン」からくみ上げた地下水を浄化処理し、海に放出する計画だ。壊れた建屋に地下水が流入して生じる汚染水の量を抑制することが期待される。 風評被害を懸念する県漁連は、容認の前提条件として、厳格な水質管理や安全性に関する広報の強化など5項目を要望している。東電は真摯(しんし)に対応し、早期の放出を実現せねばならない。 水質管理について、東電は、飲料水の国際基準よりも厳しい目標を設ける方針だ。専用の処理システムによる水の浄化試験も実施している。データの公開と丁寧な説明で不安を解消したい。 福島第一原発の建屋に流入する地下水の量は当初、1日約400トンに達していた。 昨年5月以降、山側の別の井戸から汚染前の地下水をくみ上げ、海に放出している。これにより、流入量は約300トンに減った。 新たにサブドレンからのくみ上げ
2年近くもの「原発ゼロ」にようやく終止符が打たれた。 九州電力・川内原子力発電所1号機(加圧水型・出力89万キロワット)の再稼働である。11日午前から炉心の制御棒を引き抜く、原子炉の起動操作が行われた。 東日本大震災を受けて導入された新規制基準の下での、初の原発再稼働であり、1号機にとっては4年を超える長い停止期間を経ての起動である。 竜巻による飛来物対策のほか、機器冷却用の海水ポンプを津波から守る防護壁設置などを行い、原子力規制委員会によって基準を満たしていることが認められた。 ≪前進だが足取りは重い≫ 地元の薩摩川内市や鹿児島県の同意も得た再稼働だ。関係者の取り組みに深く敬意を表したい。 14日には1号機からの電気が送電線に流れるようになり、徐々に出力を上げて9月からフル出力の営業運転に移行する見通しだ。
九州北部と東北北部の梅雨明けが29日に発表された。台風の上陸、接近などの影響で、7月下旬の日本列島は猛暑と豪雨が同居する不安定な天候が続いたが、これから8月半ばにかけては太平洋高気圧が張り出し、暑さが最盛期を迎える。 改めて、熱中症予防に万全を期したい。 熱中症は、高温多湿の環境で体の熱を十分に放出できず、体温調節機能が低下して起こる。めまいや吐き気、脱力感のような「軽い症状で済むだろう」といった軽視は禁物だ。 総務省消防庁によると、今年4月27日から今月26日までに熱中症で救急搬送された人は2万3千人を超え、28人が死亡している。 特に、体温調節がうまくできない高齢者や乳幼児のいる家庭では、熱中症が命にかかわる場合があることを肝に銘じたい。 具体的には、炎天下の外出や運動を避けるとともに、水分と塩分をこまめに補給し、十分な睡眠と休養をとって体調管理を心がけることが予防の基本だ。 室内や夜
今年も7月から、夏の節電期間を迎える。 電力業界は家庭や企業に対して自主的な節電を呼びかけることにしており、政府はこれで夏場の電力需要期を乗り切れるとみている。 だが、電力不足は解消されていない。 電力各社は、すべての原発が稼働を停止する中で火力発電の増強や他社からの融通を駆使するなど、電力確保に躍起となっている。「原発ゼロ」に伴って電気料金も上昇しており、家計や企業を圧迫している。 台風などの災害による発電所のトラブルも懸念される。「電力は足りている」との油断は禁物である。わが国が置かれている電力危機を忘れてはならない。 節電期間は9月までの3カ月間で、数値目標は設定しない。無理のない範囲で上手な節電を心がけることに異存はない。だが、節電頼みでは根本的な解決にならないことを、厳しく認識すべきだ。 東日本の供給予備率は安定的な電力供給に最低限必要な3%を上回り、8%を確保した。だが原発比率
電力は日本の経済・社会を支える極めて重要なインフラである。 電源構成の将来像は、安全性はもとより経済性やエネルギー安全保障、地球環境への影響を総合的に判断して定めるべきだ。 経済産業省の有識者会議が、2030年の望ましい電源構成案を公表した。これを踏まえ、5月中にも政府案が決定される。 東日本大震災前に29%だった原子力発電の比率を「20~22%」とし、10%の再生可能エネルギーは「22~24%」に倍増する。残りは火力発電で賄う内容だ。 ◆高コスト体質が心配だ 政府は、電源構成をもとに温室効果ガス削減目標を定め、6月の先進7か国首脳会議で示す。 安全性の確保を前提に一定の原発比率を維持する。環境負荷の小さい再生エネは、コストを勘案しながら最大限活用する。燃料を輸入に頼る火力は抑制する。こうした方向性は妥当だろう。 燃料費が安く、昼夜を問わず発電するベースロード電源は、原発と石炭火力、再生エ
定期検査で運転停止中の関西電力高浜原子力発電所3、4号機に関し、福井地裁が再稼働差し止めを命じる仮処分を決定した。 関電が決定を不服としているのは、もっともである。 原子力規制委員会は2月、高浜3、4号機の再稼働に向けた合格証にあたる「審査書」を関電に交付した。東京電力福島第一原発事故後に厳格化された新規制基準を満たしていると結論づけた。 新基準は、地震や津波の想定を拡大し、これを大幅に上回った際の対策を求めている。 ところが、樋口英明裁判長は新基準の考え方を否定し、「これに適合しても安全性は確保されていない」と断じた。ゼロリスクを求めた非現実的なものだ。 1年7か月にわたる高浜原発の安全審査で、関電は想定地震の規模を引き上げた。 旧基準時の2倍近い揺れに耐えられるよう、配管などを耐震補強し、最高6・7メートルの津波に耐えられる防潮堤を設けた。非常用の電源や冷却設備も整備した。 樋口裁判長
安倍晋三首相は、公正感に欠けるこの事態を看過するつもりなのか。 原子力規制委員会が、同委の下にある有識者会合のまとめた日本原子力発電・敦賀発電所(福井県)敷地内の破砕帯に関する評価書を受理した件である。 評価書は、同発電所2号機(加圧水型・116万キロワット)の原子炉建屋の下の破砕帯を「活断層」と判断する内容だ。原発の新規制基準では、廃炉を意味する評価である。 問題なのは、作成の手続きや、活断層と結論づけた検証作業の適正さに重大な疑問を残したまま、評価書が受理されたことだ。 敦賀発電所の敷地内には、原子炉建屋の東方に浦底断層という活断層が走っている。民主党政権時代、そこから枝分かれしているように見える当該破砕帯も活断層ではないか、と疑われたことから、他の5発電所とともに重点調査の対象に選ばれた。 敦賀発電所の破砕帯に関する有識者の評価会合などは平成24年12月以来、12回開かれている。日本
ウラン資源の有効活用へ、政府と電力会社にはプルサーマル計画を軌道に乗せることが求められる。 九州電力の玄海原子力発電所3号機を巡り、市民団体のメンバーが、使用済み燃料から取り出したプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料の使用差し止めを九電に求めていた。佐賀地裁は、その訴えを棄却した。 原告側は「MOXから発生するガスの圧力で被覆管に隙間が生じ、炉心溶融などの重大事故を引き起こす」などと主張した。 判決は、証拠として提出された九電の試験データや解析計算などを検証し、「被覆管の隙間は発生せず、炉心溶融の危険は認められない」と結論付けた。 事故により、住民の健康が侵される危険性があるとする原告側の主張についても、「何ら立証されていない」と退けた。 原発の通常運転でも、ウラン燃料の一部はプルトニウムなどに変化し、プルサーマルと似た現象が起きる。海外では1960年代にプルサーマルが導入され、
運転開始から40年前後が経過している高経年原発7基のうち、5基の廃炉が決まった。 保有する関西電力、日本原子力発電、中国電力、九州電力の各取締役会で決定された。 東京電力福島第1原子力発電所の事故を受けて原発の運転期間が原則40年に制限されたことに導かれた結果である。 これらの原発に大規模な対策工事を施して運転延長を申請すれば、1回に限って最大20年の延長が認められる可能性はあった。 にもかかわらず、7基のうち、廃炉表明がなされなかったのは、関電の高浜1、2号機(福井県)だけである。 その関電も美浜1、2号機(同県)については廃炉にする。今回電力会社の大勢が廃炉に向かった理由の一つはコストの問題だ。 古い原発は、新しい原発に比べて発電力が小さい。対策工事に1千億円規模の巨費を投じると採算が取りにくいためである。
安倍晋三政権は、汚染水を抱える東京電力・福島第1原子力発電所の窮状をいつまで傍観し続けるつもりなのか。 事故から3年を迎えたにもかかわらず、第1原発の放射能汚染水は増加の一途をたどっている。この流れに終止符を打たない限り、廃炉作業の加速もままならないことは誰の目にも明らかだ。 汚染水の増加は、山側からの地下水が原子炉建屋などに絶え間なく流れ込んでいるためだ。1日400トンの量に上る。この地下水が建屋地下室の放射能汚染水と混ざり合うことで毎日400トンの新汚染水が生じている。 東電はトリチウム以外の放射性物質を回収できる浄化装置(ALPS)などを稼働させているが、汚染水の総量は増えている。2日に1基のペースで大型タンクを増設し、既に千基を超える貯蔵タンクが第1原発の敷地内にひしめく状態だ。 現場の労力の相当部分が汚染水対策で消耗している。貯蔵タンクからの汚染水漏れが起きているが、安全管理体制
中間貯蔵施設 「2町集約」で早期完成目指せ(3月8日付・読売社説) 福島の復興を加速させるカギとなるのが、放射性物質に汚染された廃棄物を一括保管する中間貯蔵施設の建設だ。 環境省は地元住民に必要性や安全対策を丁寧に説明し、早期完成を図る必要がある。 中間貯蔵施設に搬入するのは、東京電力福島第一原子力発電所の事故により汚染された土や焼却灰だ。最大で東京ドーム20杯分以上の廃棄物を保管する。政府は1・1兆円の建設費に電源開発促進税を充てることを決めている。 除染作業で除去された汚染土などは現在、県内各地の仮置き場で保管されている。中間貯蔵施設の建設が前に進まないため、仮置き場から動かせない。仮置き場も不足している。 このままでは、除染作業が滞る悪循環は解消しない。 石原環境相は昨年12月、福島第一原発に近い双葉、大熊、楢葉の3町に建設の受け入れを要請した。用地として、計19平方キロを国有化する
政府の原子力規制委員会が進める原発の安全審査で、最終的な結論を出す前に国民からの意見募集や公聴会などの実施が計画されている。 一部原発の審査作業が大詰めを迎えた中で突然「後出し」の新ルールを追加するのは問題だ。 原発再稼働に必要な安全審査は大幅に遅れている。予定になかったハードルが加われば、審査がさらに長引くことになる。規制委には再稼働を遅らせたい意図があるのではないかとの疑念すら持たれかねない。 規制委の役割は、科学的な知見に基づいて原発施設に関する安全性を高めることにある。規制委は、あくまで迅速で専門的な審査に徹すべきである。 田中俊一委員長は会見で「最終的な決定を出す前に、いろいろなご意見を聞くべきではないかと考えている」と話し、審査終了前にパブリックコメントの募集や公聴会を検討する考えを示した。方法によっては、審査そのものに影響を与えかねない。 福島第1原発事故を受け、過酷事故対策
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