「エネルギー資源のない我が国は、原子力発電抜きには国民生活、国力の維持・発展は考えられない。核燃料サイクルは原子力発電の屋台骨を支える必要不可欠な事業だ」 日本原燃の川井吉彦社長は29日の定例記者会見で、改めて菅首相による「脱・原発依存」表明に反論した。 これまでに培った技術や人材の意義、地元との協力関係に言及し、「これらを捨てていいのか。熟慮に熟慮を重ねるべきだ」と主張した。訴えは会見の冒頭、約6分間。新たな安全対策についての言及が4分ほどだっただけに、その熱の入れようが際だっていた。 青森県のある幹部は「首相だけでなく、あちこちから脱原発の意見が出ているだけに、危機感が大きいのだろう」と推測していた。
九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の再稼働を巡る「やらせメール」問題に続いて、原子力の安全を監視する経済産業省原子力安全・保安院が国主催のシンポジウムなどで、原子力政策の反対派を抑える「世論誘導」にかかわっていた。 推進側と規制側が一体となった「原子力ムラ」のなれ合い体質が改めて露呈、原発への信頼の失墜は避けられない。保安院の存在意義が問われるとともに、停止中の原発の再稼働問題にも影響を与えそうだ。 「極めて深刻な事態だ。徹底して解明したい」 海江田経産相は29日午後の緊急記者会見で厳しく対処するとの姿勢を見せ、沈痛な表情を崩さなかった。 保安院の世論誘導の舞台の一つは、2007年8月に静岡県御前崎市で開かれた、国主催のプルサーマルのシンポジウム。中部電力が29日、資源エネルギー庁に提出した報告書には、開催直前に保安院から「質問がプルサーマル反対派のみとならないよう、質問を作成し、地
経済産業省原子力安全・保安院が原子力発電所関係のシンポジウムで「やらせ」質問を要請していた問題は、与野党にも波紋を広げた。 民主党の安住淳国会対策委員長は記者会見で、「保安院の経産省からの完全分離は急がないといけない。まさに、野党時代に我々が指摘していた『政官業』の癒着だ。政府には保安院の解体を申し上げたい」と述べ、経産省と安全規制を担う保安院の分離の必要性を強調した。玄葉政調会長(国家戦略相)も記者会見で、「今後のエネルギー政策を考える上で、無作為抽出した国民との熟議という方法が必要だ」と指摘した。 これに対し、中部電力のやらせ質問があった2007年当時、政権与党だった自民党の逢沢一郎国会対策委員長は記者会見で「もし事実なら、大変遺憾なことだ」と歯切れが悪かった。連立を組んでいた公明党からは「当時は原発を推進するため、致し方ない面もあったのかもしれない」(幹部)との声も漏れた。
日本エネルギー経済研究所は28日、国内の原子力発電所54基すべてが2012年春に停止した場合に、12年度の実質国内総生産(GDP)を最大で3・6%(20・2兆円)押し下げるとの試算を発表した。 電力不足が国内産業の空洞化を加速させることで失業者数も19万7000人増加するという。 同研究所によると、火力発電所をフル稼働させても、12年夏には最大電力需要に対し7・8%の供給力不足が生じる。企業は節電を迫られることで生産活動が低迷し、生産拠点の海外移転も避けられない。電力需要のピークを迎える12年7~9月期は、電力不足がない場合に比べて実質GDPは5・6%(7・7兆円)減となり、失業者も4万9000人増える。
経済産業省原子力安全・保安院による中部電力への「やらせ質問」で、海江田経産相は29日、緊急記者会見を開き、「国が意見を誘導していたのなら、申し訳なく思う」と謝罪。法律家などで構成する第三者委員会を設置して事実関係を徹底的に解明し、8月末をめどに報告をまとめる考えを明らかにした。 原発を規制する側の保安院が、原発推進側に立っていたことについて、海江田経産相は「極めて深刻な事態」と述べ、今後、経産省から分離、独立する予定の保安院の職員に対し、「新しい組織に行くわけだから、考え方を大きく改めてほしい」と要望した。 現在停止中の原子力発電所の運転再開への影響については「影響がまったくないということはないだろう」と語った。
中部電力は29日、2007年8月に国主催で地元・静岡県御前崎市で開催された浜岡原子力発電所のプルサーマル計画に関するシンポジウムで、同社社員や関連企業などに参加を要請していたとの内部調査結果をまとめ、経済産業省に報告した。 報告書では原子力安全・保安院から、質問がプルサーマル反対派だけにならないように質問を作成し、地元に質問を依頼するよう要請があったことも明らかにした。ただ、同社の判断で、特定の意見表明の依頼はしなかったという。同社は「参加の呼びかけが議論を誘導する意思があったという誤解を招く恐れがあったと深く反省している」と謝罪した。 中部電力の発表によると、説明会の参加者は524人で、このうち同社社員は150人前後だった。関連企業の参加者は把握していないという。
原発耐性検査 再稼働への基準と道筋を示せ(7月28日付・読売社説) 原子力発電所が想定以上の地震や津波に襲われた場合の安全性を確認するストレステスト(耐性検査)と、原発の再稼働の問題を巡り、各地で混乱が広がっている。 政府は先週末、テストの実施計画を策定し、電力各社に実施を指示した。しかし、新潟県の泉田裕彦知事は「テストは気休め。(再稼働は)あり得ない」、佐賀県の古川康知事も「何のためのテストか」などと批判している。 テストが複雑なうえ、手間がかかることが、地元の理解を妨げる一因となっているのだろう。 定期検査で停止中の原発の再稼働の条件として今月初め、テストの実施を言い出した菅首相は、その意義や、今後の道筋を丁寧に説明する必要がある。 実施計画によると、テストは定期検査を終えた原子炉が対象の1次評価と、全原子炉が対象の2次評価がある。1次評価は重要機器に絞って安全性を確認し、2次評価は原
「伊藤ハム」(兵庫県西宮市)は19日、放射性セシウムに汚染された可能性がある牛の肉を原料に製造したローストビーフ約20本が、大手スーパー「イオン」の中元用ギフトとして販売されたと発表した。 伊藤ハムや神戸市によると、福島県郡山市などで出荷された84頭のうちの1頭の肉で、埼玉県から14・5キロ・グラムを仕入れ、6月中旬に六甲工場(神戸市東灘区)で加工した。商品名は「黒毛和牛ローストビーフ400グラム」で、賞味期限が2012年6月14日と18日の製品。イオンでは今月1日から発送したが、ほかの肉で作られた約1200本と混在しているため、すべての送り主と送り先に経緯を説明し、回収を進める。問い合わせは、伊藤ハムお客様相談室(0120・01・1186)。
大飯原発停止 電力危機がさらに深刻化する(7月17日付・読売社説) 福井県おおい町の関西電力大飯原子力発電所1号機で、緊急冷却系のタンクの圧力が下がるトラブルがあり、関電は原因調査のため、16日、運転を手動でストップした。 出力120万キロ・ワット近くの大規模電源だ。原発依存度が約5割に達する関電としては“虎の子”を失う事態と言える。 関電は、11基の原発をいずれも福井県に保有しているが、これで停止中は5基となる。今週、さらに2基が定期検査で止まる。盛夏を前に、関西圏も電力供給の維持が一層厳しくなるだろう。 大飯原発のトラブルは、タンクの弁の異常が原因として疑われている。直後に復旧し、放射性物質の漏出もなかった。重大な事故に直結するトラブルではない、とみられている。 問題は、再稼働の時期が不透明なことである。原因を特定し、対策を施しても、当分の間、運転の再開は困難だろう。 菅首相が、定期検
玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働を巡る「やらせメール」問題で、九州電力の真部利応(としお)社長(66)が、引責辞任する見通しとなった。 海江田経済産業相が15日、真部社長の即時辞任を求めたことを受け、辞任によって経営責任を明確にせざるを得ないと判断した模様だ。27日までに取締役会を開き、辞任を正式決定する方向だ。 松尾新吾会長は16日未明、読売新聞の取材に対し、「経産相の発言を念頭に考えていく」と述べ、真部社長の辞任は避けられないとの考えを示した。真部社長の辞任時期は、不祥事の再発防止策などに一定のメドがついた後とみられる。 真部氏は2007年6月、末席の取締役から異例の14人抜きで社長に就任した。
福島県内の保護者らでつくる市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」(中手聖一代表)などは30日、東京電力福島第一原発事故の影響調査で、福島市内の6~16歳の男女10人の尿を検査した結果、全員から微量の放射性物質が検出されたと発表した。最大値は、放射性セシウム134が8歳女児の尿1リットル当たり1・13ベクレル、同137は7歳男児の同1・30ベクレル。 中手代表は「通常、子どもの尿に放射性物質は含まれておらず、原発事故の影響は間違いない」としている。尿は5月下旬に採取し、フランスの放射線測定機関が検査した。
【ウィーン=末続哲也、高田真之】ウィーンで開催中の国際原子力機関(IAEA)の閣僚級会議は20日午後、事務レベルによる非公開の作業会合がスタートした。 東京電力福島第一原子力発電所の事故評価では、日本政府と東電が一体となった対応に、加盟国から事業者責任のあいまいさを批判する声が相次いだ。 事故評価を議題とする会合では、広瀬研吉・内閣府参与が日本政府の事故報告書を、IAEA担当者が現地視察の調査報告書をそれぞれ説明した。 これに対し、会場からは、原子炉格納容器の圧力を下げるため蒸気を外部に逃がす「ベント」や海水注入が遅れた点を重く見て、「現場で判断可能な部分まで上に指示を仰ぎ、時間がかかった」などの批判が相次いだ。IAEAの安全基準は「原発の安全性は一義的に事業者に責任がある」としており、日本の対応に疑問の声が上がった。
【ウィーン=浜中昭彦、高田真之】東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、ウィーンの国際原子力機関(IAEA)本部で20日から閣僚級会議が開かれる。 日本からは海江田経済産業相らが出席し、原発の安全性向上に向けた議論を通じてIAEAの機能強化を訴える共同宣言をまとめる。また、IAEAは、加盟各国の原発を抜き打ち調査する仕組みを検討している。 高い安全性を誇った日本での原発事故に対する各国の関心は高く、原発を推進する米・仏や脱原発の独などから原子力・エネルギー関連の閣僚らが参加する。参加者数はIAEAの会合では最大級の900人規模になる見通し。 5日間の会期中に、全体会合と事務レベルの作業会合が開かれる。作業会合では「事故評価」「緊急時対応」「国際的な原子力安全の枠組み」の3議題で議論する。20日にまとめる共同宣言には、IAEA加盟国の専門家が定期的に原発の安全性を評価する制度や、国際的な賠
原発再開要請 地元への丁寧な説明が必要だ(6月19日付・読売社説) 定期検査などで停止している各地の原子力発電所の運転再開に向け、政府は18日、現時点での安全対策は適切、との判断を示した。 これを受けて海江田経済産業相は、今週末にも原発立地の自治体を訪問し、検査などで止まっている原子炉の運転再開を要請する考えを明らかにした。 東京電力福島第一原発の事故で、原発の安全性に懸念を強める自治体の説得は、これからが正念場となる。政府には十分かつ丁寧な説明が求められよう。 今回の安全対策は水素爆発などの過酷事故を想定したものだ。 原子力安全・保安院が、原発を持つ国内11社に対し、全電源喪失といった緊急時に、中央制御室の作業環境、通信手段などが確保できるかどうか、報告を求めた。立ち入り検査も実施した。 3月末にも各社に安全対策を指示し、5月6日、地震と津波に対する短期的な対策は適切だと“お墨付き”を出
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