ルソーに代表される理想主義的な社会思想は,フランス革命による社会進歩に貢献した反面,革命がもたらした混乱に対処できなかったり,ときには混乱を増幅する面もあった。そのため,フランス革命後の社会思想では,あるべき社会の姿をさぐる以前に,現実の社会のメカニズムを「科学」的・実証的に研究することが重視されるようになった。この時期に活躍したサン・シモン(Claude-Henri de Saint-Simon, 1760-1825),コント(Comte, Augste, 1798-1857),トクヴィル(Tocqueville, Alexis de, 1805-1859),らは,いずれもこうした志向をもっている。この授業では,トクヴィルとその代表作である『アメリカの民主政治(De la démocratiee en Amérique)を紹介する。