人口学の用語で、「人口慣性」という言葉がある。現時点の出生可能女性数が、次世代の子供の数を規定してしまうということだ。 70年代半ばから、合計特殊出生率が2を割り込んでいた日本が、それから30年もの間、総人口の微増ないし維持ができていたのは、戦後のベビーブームの「慣性」によるものだ。現時点における人口減少傾向も、すでに「慣性」がついていて、どんな対策を取るにしても、この先50年程度は人口減少は止めることができない。 つまり、出生率がどう変化しようが、今世紀中葉には、8000-9000万人程度まで人口が減少することは、所与の事態であるとして、福祉や税制の制度設計をしなくてはならないということになる。 社会政策的には、総人口よりも年齢別人口構成の変化の方が重要だが、これも、政策ぐらいでは変えることができない。大規模な戦争、伝染病、飢餓などが起こらないと考えられるので、死亡率の予測幅は非常に狭い