「ウイルス対策ソフトの作成なんて、民間がやっていることはやらなくていいんじゃないですか」 平成22年11月、東京・品川のホールで行われた行政刷新会議の事業仕分け第3弾で「仕分け人」の厳しい声が響いた。 やり玉に挙がったのは独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」。国内唯一のコンピューターウイルスの公的届け出機関であり、ウイルスやソフトの脆弱(ぜいじゃく)性分析などを手がける。 IPAは仕分け人への説明で、ウイルス感染を実際の感染症にたとえ「ワクチンを作っているのではなく、いわば国立感染症研究所のような役割だ」と説明した。結局、事業の見直しは見送られた。しかし、IPAの業務に対する無知を露呈したこのやり取りは、政府の情報セキュリティーに対する意識の低さを示す象徴的な出来事だった。 ■遅れる情報共有 多くの省庁や防衛関連企業に情報の盗み出しを狙った「標的型メール」が送りつけられている状況を受