(日本人)橘玲 人気作家の橘玲氏の新作である。現在、この書評を書いている時点でAmazon順位が7位と相当に売れているようだ。内容は非常に広範な学術研究やさまざまな書籍の内容を、橘氏が再構成したものである。400ページ近いハードカバーで、かなり重厚な作りだけど、分かりやすくリズミカルな文体なので簡単に最後まで読みきれるだろう。 3・11東日本大震災では、肉親を亡くしても、避難所でお互いに支えあい、いたわり合っていたうつくしい日本人は世界を感動させた。一方で政治家や官僚や東電のような大企業の幹部は責任を逃れ、利権をあさり、権力にしがみついていた。そこにはいつもの醜い日本人がいた。日本の被災者は世界を感動させ、日本の政治は国民を絶望させたのだ。 このいつもの構図は、日本人という国民性から導き出される当然の帰結というのが、本書の主張である。そして本書は、そういった日本人固有の国民性と信じられてい