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ブックマーク / honz.jp (37)

  • 『アーカイブズが社会を変える 公文書管理と情報革命』事実の積み重ねが未来をつくる - HONZ

    財務省の文書改竄問題をめぐってSNS上で繰り広げられている議論の応酬を見ていて残念に思うのは、現政権への好き嫌いの感情をベースに語られた言葉が実に多いこと。そしてやり取りがヒートアップすればするほど、問題の質からはどんどん遠ざかってしまっていることだ。 今回の一件は、内閣が責任をとって総辞職すればそれですむような話ではない。またリベラルや保守といった政治的スタンスの違いによって見解が分かれるような類の話でもない。なぜなら財務省が手を染めた行為は、私たちの社会の基盤を脅かす危険性を孕んでいるからだ。 かつて公文書管理と情報公開について取材したことがある。その時わかったことは、公的な文書をいかに保存するか、そしてそれをどう公開するかということについて、日はほとんど初心者のレベルにあるということだった。自分自身、この分野についていかに無知だったかを思い知らされショックを受けた。 いくつか例証

    『アーカイブズが社会を変える 公文書管理と情報革命』事実の積み重ねが未来をつくる - HONZ
    unyounyo
    unyounyo 2018/03/20
  • 『スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること』起こりそう、起こってもおかしくない、起こりうる - HONZ

    書は摑みどころがない。何が新しいか、面白いのかと問われたときに、答えに窮する漠然としただ。スペキュラティヴという言葉にヒントがあるだろうかと辞書を引けば、思索的、思弁的、投機的といった意味がある。しかし、どの言葉を当てはめてもしっくりとは来ない。しかし、それでも不思議と紹介したくなる魅力を持っている。スペキュラティヴ・デザインという聞き慣れない言葉の捉えられなさ自体がその魅力となっていると思う。 どうして、スペキュラティヴ・デザインは掴みどころがないかといえば、自らをわかりやすく定義し、定義されることを拒んでいるからだ。単一の価値観に異を唱え、自らも単一化したイメージとして理解されることを拒否する。厄介な問題に対する「ソリューション」ではなく、物事の可能性を思索するための手段として用いる。想像力を駆使して、新しい見方を切り開くことに重きをおいている。 そこで一つ疑問が湧く。スペキュラテ

    『スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること』起こりそう、起こってもおかしくない、起こりうる - HONZ
    unyounyo
    unyounyo 2016/02/28
    『無人警察』の応答が問題提起だったならばとか、、、
  • 『食糧と人類』エネルギーから見た文明史 - HONZ

    「文明を動かす究極のエネルギーとは何か?」 この問いへの答え方は、その人の考え方よりも置かれた状況に左右されるのかもしれない。 「文化」や「技術」という答えが場所を占めるようになったのは、何千年というスパンで見ればここ最近のことだろう。それらを謳歌できるのも、うに困らなくなってからの話である。これまでも、そしてこれからも、文明を動かすエンジンはべ物だ。 文化技術ではなく、糧生産を軸に文明について考えてもいいのではないかと著者は言う。その歴史は、1つの問題を解決するとまた別の問題が持ち上がる、危機と方向転換のサイクルを繰り返しながら進んできた。書は、何千年にもわたる壮大な糧史を一気に振り返ろうとする意欲的な1冊である。 狩猟採集から農耕定住、そして都市生活へ。エネルギー不足から過剰への転換、そして環境問題の発生。糧生産の歴史を把握するには、そうした大きな流れの中にある、数々の分

    『食糧と人類』エネルギーから見た文明史 - HONZ
  • 真実はひとつ。人はそれにたくさんの名前をつけて語る──『千の顔をもつ英雄』 - HONZ

    果たして、英雄に惹きつけられない人がいるだろうか? といえば、もちろんいるにはいるのだろうが、大抵の場合英雄とは憧れ、理想的な対象として存在している。神話におけるヘラクレス、あるいは仏教におけるブッダ、アーサー王にイエス・キリスト。神話クラスの人間でなくとも数十数百といった年数を語り継がれてきた民間伝承やお伽話には数限りなく人間の弱さを克服し前に進む英雄の姿が描かれている。 個々の作品に対する好悪や、英雄が理想像であるかどうかは人によって様々としても、それらは多くの人間を惹きつけてやまないからこそ生き残り続けてきたのだ。しかしなぜ、どのような理由が人を英雄に惹きつけるのだろう。そこには数式のようにきっちりとしたものではないにしても、普遍コードのような物が存在しているのであろうか。 書『千の顔を持つ英雄』は、スター・ウォーズの生みの親ジョージ・ルーカスがその著作に影響を受けていることを表明

    真実はひとつ。人はそれにたくさんの名前をつけて語る──『千の顔をもつ英雄』 - HONZ
  • メルカトルからグーグルへ『世界地図が語る12の歴史物語』 - HONZ

    地図を見るのは楽しい。行ったことがある場所なら、あぁこんなだったと思いだせるし、行ったことがない場所なら、どんなところだろうかと想像力がかきたてられる。いまや、世界中、地図のないような場所はない。しかし、そんな時代になったのは、それほど昔のことではない。 古代バビロニアに始まり現代で終わる、地図についての物語集だ。それぞれの地図が作られた時代が語られ、その意味とインパクトが語られる。一つずつが含蓄あふれる物語になっているが、通して読むと、地図というものが、どのような目的でどのように作られてどのように利用されてきたのかが手に取るようにわかる。 最古の地図として紹介されているのは、イラクで出土した、紀元前700~500 年頃の古代バビロニアの粘土板である(序章)。そこに刻まれた楔形文字の内容から地図だと確定されているが、その絵柄だけだと地図とはわからないという程度の代物だ。それが、紀元前150

    メルカトルからグーグルへ『世界地図が語る12の歴史物語』 - HONZ
  • 『第三帝国の愛人』アメリカ大使一家が見た、ナチスの暗い真実 - HONZ

    1933年1月、ヒトラーがヒンデンブルク大統領の任命により首相になってから、翌1934年8月、ヒンデンブルクの死と同時にあらゆる権能を掌握し、絶対的な権力者・総統となるまでの2年弱。ヒトラーとナチスの「権力掌握の総仕上げ」が成され、日常生活に潜んでいた恐怖政治の実体が一気に表面化して世を覆い尽くすこの時代を、ヒトラー政権下で初めてベルリンに赴任したアメリカ大使とその一家が残した日記や手記、膨大な文書や歴史資料をもとに再現したのが書である。 シカゴ大学の教授で著名な歴史学者でもあるウィリアム・D・ドッドは、就任したばかりの大統領・ローズベルトから「政府に奉仕する気があるか聞きたい。ドイツに大使としていってもらいたいのだ」という電話を受ける。「ドイツリベラルアメリカ人の手を示してもらいたい」と。このときすでに4ヶ月も駐独大使の席は空席だった。が、ドッド自身にとっても、周囲の人々にとって

    『第三帝国の愛人』アメリカ大使一家が見た、ナチスの暗い真実 - HONZ
  • 『コーランには本当は何が書かれていたか?』 - HONZ

    イスラムを深く知るためには、「コーラン」を避けて通ることができない。ジハードで死ぬと、楽園の72人の乙女という報酬があると書かれているのは当か? そして過激派たちによってどのように曲解され、利用されてきたのか? 今あらためて問われる、コーランに書かれている内容の質。(HONZ編集部) 書はカーラ・パワー(Carla Power)著If the Oceans Were Ink――An Unlikely Friendship and a Journey to the Heart of the Quran(『たとえ海がインクであっても――奇妙な友情とコーランの心髄への旅』)(2015年 ヘンリーホルト刊)の邦訳です。 副題にある「奇妙な友情」とは、著者である気鋭のアメリカ人女性ジャーナリスト、カーラ・パワーと、書における彼女の対話の相手、イスラム学者のモハンマド・アクラム・ナドウィー師と

    『コーランには本当は何が書かれていたか?』 - HONZ
  • 『たのしいプロパガンダ』 大衆煽動は娯楽の顔をしてやってくる - HONZ

    タイトルに違和感を持つ人は多いかもしれない。政治宣伝を意味する「プロパガンダ」と聞けば、権力者を讃える映像や音楽を嫌々に観たり聞いたりする印象が強い。そして、その映像は退屈きわまりなく、楽しいわけがないからだ。 書を読めばその考えは一変する。ナチスはもちろん、欧米や東アジア、そして日でかつて展開されたプロパガンダの実例が豊富に並ぶが、「プロパガンダの多くは楽しさを目指してきた」と著者は語る。銃を突きつけるよりも、エンタメ作品の中に政治的メッセージを紛れ込ませ、知らず知らずのうちに特定の方向へ誘導することこそ効果的だろうと指摘されれば、確かにその通りだ。 中でも、「プロバガンダの達人」として紹介されるのが、北朝鮮の故・金正日。北朝鮮と言えば、将軍様を讃える映画や個人崇拝の歌の数々が頭に浮かぶ。「どこが達人なんだ!」と叫びたくもなるだろうが、金正日の発言からは意外にも硬軟交えて人民を操縦し

    『たのしいプロパガンダ』 大衆煽動は娯楽の顔をしてやってくる - HONZ
    unyounyo
    unyounyo 2015/10/20
    タペンスよりはフォイルだな。
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    『腸よ鼻よ』10指腸 2018年09月22日 澄み渡る青い空と透き通るような海、白い砂浜のある南の島――沖縄。 この島に生まれ、蝶よ花よと育てられた1人の少女がいた。 彼女の名は島袋全優。 漫画家を志し、いずれは大都会東京での タワーマ...

    マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー
  • 連続殺人犯は遺伝するか『暴力の解剖学』 - HONZ

    では馴染みがないが、神経犯罪学=neurocriminologyという分野がある。犯罪の原因には社会環境的な要因だけでなく、生物学的要因が密接に関わっているのではないかという見地から、遺伝的要因、胎児期・周産期の影響、外傷を含む後天的脳障害、自律神経系の異常、栄養不良や金属などの脳への影響などを研究する学問だ。 一般に凶悪な犯罪が起こった場合、虐待などを含む家庭環境や、貧困などの社会的環境を調べ、それを要因のひとつとする場合が多い。とりわけ裁判では情状酌量の証拠として提出されるものだ。たしかに、それによって社会的な環境が整備され、より良い社会を作ることはできる。 しかし、それは咳をして熱があるから風邪だと断定し、対症療法として解熱剤などを処方することに等しい。来は風邪のウイルスを特定し、そのウイルスが体内でどのように作用しているかを知ることで、根的な治療をするべきなのだ。(風邪ウィ

    連続殺人犯は遺伝するか『暴力の解剖学』 - HONZ
  • 『世界を破綻させた経済学者たち 許されざる七つの大罪』 - HONZ

    主流派経済学にひそむ欺瞞 2008年にアメリカで勃発した金融危機は、起きるべくして起きた出来事ではあった。 リスクが大きいローン債券を証券化した「デリバティブ」(金融派生商品)が主役を演じたバブル崩壊劇であったが、そんな危険物を扱う市場を透明にしようとする努力はクリントン政権時にわざわざ禁止されていた。個々のトレーダーたちは成功すれば莫大な報酬を得る一方、失敗してもダメージは比較して小さい仕組みだったから、おのずと高リスクの取引にのめり込んでいった。なかでも証券の値下がりリスクに備える保険商品であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は住宅市場の過熱とともに住宅ローン担保証券の損失に対して広く用いられるようになっていたが、検査が厳格でなく、しかも発行者には準備金を積み立てる義務がなかったため、保険大手のAIGが保証金の

    『世界を破綻させた経済学者たち 許されざる七つの大罪』 - HONZ
  • 『こうして、世界は終わる すべてわかっているのに止められないこれだけの理由』 - HONZ

    書『こうして、世界は終わる』はどんなジャンルのなのか、ひとことで説明するのは難しい。 時代設定は西暦2393年。温暖化による海面上昇で西洋文明が崩壊してから、300年の時間がたっている。第2次中華人民共和国の歴史研究者が、20世紀から21世紀(つまり私たちが生きている今現在)を振り返って、未曽有の大災害をなぜ防げなかったのかを語るという内容だ。 それだけ聞くと近未来SF小説のように聞こえるが、災害のドラマチックな描写も、SFにはつきものの新しいテクノロジーもない(一つだけ、大気中の二酸化炭素量を減らすあるものを、日人の女性科学者が開発したということになっているが)。 21世紀の今を生きている私たちの周囲で何が起こっているのか、その後、地球がどのような状態になったのかがとてもリアルに描かれ、ノンフィクションを読んでいるような印象だ。 社会的に大きな影響力を持つ現役の科学者が、このような

    『こうして、世界は終わる すべてわかっているのに止められないこれだけの理由』 - HONZ
  • 『石油の帝国』国際政治経済を動かす黒幕 - HONZ

    世界上位30カ国にひけをとらない財務力をもち、世界200カ国以上でエネルギービジネスを展開する石油最大手エクソンモービル(年間の売上高はタイやシンガポールのGDP以上!)。その強靭な財務力と圧倒的な技術力を駆使し、アメリカの一企業にもかかわらず、独自の外交・政治活動を展開するほどの巨大企業だ。書は、このアメリカ最大最強企業が世界中で繰り広げる資源獲得競争の舞台裏を余すところなく描き、エクソンモービルという巨大企業の存在をあぶりだす希代のノンフィクションである。 1999年12月1日、石油会社最王手のエクソンが、同じく大手のモービルを吸収合併し、エクソンモービルという世界最大の石油ガス生産会社が誕生した。モービルとの合併は、エクソンを、売上・純利益の面で世界最大規模の会社に押し上げただけでなく、もともと北米とヨーロッパに偏っていた同社の活動範囲を、はるか遠くアフリカ・アジア・中東・南米など

    『石油の帝国』国際政治経済を動かす黒幕 - HONZ
  • 『二重螺旋 完全版』訳者あとがき by 青木薫 - HONZ

    世界を震撼させたドキュメントには、失われたピースが存在した。行方不明になっていたクリックの書簡、そして貴重な資料写真や図版を加えて、「分子生命学の夜明け」が再び蘇る。なぜ今、『二重螺旋 完全版』なのか? その出版までの経緯を、翻訳者の青木薫さんに解説いただきました。(HONZ編集部) 1953年の2月28日、ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックは、DNAの二重螺旋構造を発見した。 それから15年後の1968年に、ワトソンはそのときの成り行きを綴った『二重螺旋』を発表する。そこに描かれていたのは、いまだ第二次世界大戦の爪痕の残る欧米を舞台とし、生命科学の景観を変えることになる発見をめぐるドラマだった。 物語の幕開けは、1951年の春。生命の謎を解きたいという野心を抱く、23歳のアメリカ人ジム・ワトソンは、たまたまナポリで開かれていた高分子学会に参加した折に、ロンドン

    『二重螺旋 完全版』訳者あとがき by 青木薫 - HONZ
    unyounyo
    unyounyo 2015/05/29
  • 『ナポレオンに背いた「黒い将軍」』革命に咲いた黒い薔薇 - HONZ

    18世紀、有色人種とりわけ黒人がその肌の色のみで差別され、奴隷として働かされていた時代に、ヨーロッパで一兵卒から将軍にまで上り詰めた有色人の男がいた。180センチを超える体躯(当時としてはかなり大きい)とハンサムな容貌の持ち主であったという。そして、その美しい肉体の中には常人では及ぶことの出来ない勇敢さと情熱を、また公正で高潔な精神を宿していた。男は自らをアレックス・デュマと名乗っていた。名はトマ=アレクサンドル・ダビィ・ド・ラ・パイユトリ-という。 彼はフランス人貴族と黒人奴隷の女性との間にできたムラートであった。自由、平等、友愛を謳うフランス革命に共感し革命の擁護者として、その軍事的才能を発揮し敵であるオーストリア兵からは「黒い悪魔」として恐れられた。 デュマは人種的差別が公然と行われていたヨーロッパで白人将兵の指揮をとり、彼らから信頼と尊敬の念を勝ち取っていた。祖国フランスが、肌の

    『ナポレオンに背いた「黒い将軍」』革命に咲いた黒い薔薇 - HONZ
  • 『目の見えない人は世界をどう見ているのか』見えないことから見えるもの - HONZ

    ずばりタイトルの通り、書は視覚障害者が世界をどのように認識しているのかについて迫っていくだ。目が見えない人とその関係者数名に対して行ったインタビュー、ともに行ったワークショップ、日々の何気ないおしゃべりなどを通して、晴眼者である著者が彼らをとりまく「見えない世界」について考えていく。 盲人の生活について書かれたはこれまでにも色々出ている。パッと見それほど珍しいテーマには思えない。しかしまえがきを読むと、書が一風変わった切り口から書かれていることがわかる。 書は、広い意味での身体論を構想しています。ただし、これはあまり前例のない身体論かもしれません。一般に身体論では健常者の標準的な体を扱います。ところが書では、「見えない」という特殊な体について考えようとしているわけですから。 書はいわゆる福祉関係の問題ではなく、あくまで身体論を扱ったであるということだ。「障害者とは、健常者が

    『目の見えない人は世界をどう見ているのか』見えないことから見えるもの - HONZ
  • 『コカイン ゼロゼロゼロ』あまりにも凄惨な現実 - HONZ

    コカインという白い薬物をめぐる書は凄惨な事件から始まる。それはキキの物語だ。 キキの物語を語るには、まずこの男のことを知らなければならない。ミゲル・アンヘル・フェリックス・ガジャルド、通称〈エル・バドリーノ〉はメキシコで「コカインの帝王」と崇められた男だ。今も〈エル・バドリーノ〉の時代もコカインの一大生産地はコロンビアだ。しかし、コカインの大量消費国アメリカにコロンビアは遠すぎる。また当時、コロンビア国内ではカリ・カルテルとメデジン・カルテルがコカインの密売ルートの支配をかけて抗争を繰り返し、力を失いかけていた。さらにメデジンの伝説的な首領パブロ・エスコバルは米連邦捜査局(FBI)の買収に手間取り、膨大な量のコカインを摘発され、窮地に立たされていた。 エスコバルは、アメリカとの国境線を支配する〈エル・パドリーノ〉に助けを求める。二人は意気投合し、共にビジネスを始める。警察官から転身し、既

    『コカイン ゼロゼロゼロ』あまりにも凄惨な現実 - HONZ
  • 『ぼくは物覚えが悪い』海馬を失った男は、永遠に続く30秒を生きた - HONZ

    今年も残すところあと1ヶ月となり、年忘れという言葉も聞こえてきた。皆さんにとって2014年はどのような年であっただろうか?そして来たる2015年のことを考えた時に、どのような感情が沸き上がってくるだろうか? 年の瀬ともなると、私たちは過去の出来事を頭の中で再現し、その情動を元に未来へ思いを馳せる。年を忘れるというくらいだから、辛かったことや不安な出来事を思い出す方も多いのかもしれない。いずれにせよ私たちは「今」という瞬間を疎かにするくらい、記憶というものに縛られながら生きている。それならば未来もなく過去もなく、現在進行形しか存在しない世界に行けば、不安を取り除くことは出来るのだろうか。 1953年、一人の男がてんかん治療のための脳手術を行った。左右の内側側頭葉を摘出するという実験的な手術であったものの、発作は無事に抑えられるようになる。しかしこの手術は、関わった全ての人にとって決して忘れら

    『ぼくは物覚えが悪い』海馬を失った男は、永遠に続く30秒を生きた - HONZ
  • 『境界の民』 難民、遺民、抵抗者。彼らには”近代”が訪れなかった - HONZ

    今、世界のルールは動揺している。ここ数ヶ月だけを見ても、フランスの同化主義に相容れない移民二世によるシャルリー・エブド襲撃テロ事件が起き、「イスラム国」は国民国家体制をあざ笑うかのようにイラクからシリアにまたがって台頭してきている。昨年にまで遡れば、スコットランドでイギリスからの独立の是非が問われたり、ウクライナで内戦が勃発したのも記憶に新しいことだろう。 これらの出来事は、いずれも国民国家体制の「エラー部分」に弾き出されてしまったような少数の人々が、世界を揺るがしたということに共通点がある。 近代の幕開けを象徴する国民国家体制が初めて成立したのは17〜18世紀のヨーロッパでのこと。アジア諸国に至っては、19世紀後半から20世紀になってからの出来事であり、その歴史はまだ浅い。 それゆえ、当たり前のように感じているこの仕組みにも、境界域に目を向ければ意外と大きなスキマが見つかる。既存の国民国

    『境界の民』 難民、遺民、抵抗者。彼らには”近代”が訪れなかった - HONZ
  • 犯罪者を特定する因子は存在するのか? 『暴力の解剖学 神経犯罪学への招待』 - HONZ

    HONZが送り出す期待の新メンバー・冬木 糸一。若干26歳にして恐るべき読書量を誇り、彼の個人ブログ「基読書」では注目のノンフィクションが続々と、HONZに先んじる形で取り上げられていった。こんな危険な輩を外で野放しにしておくわけにもいかないので秘密裏に交渉し、メンバー入りへと至った次第。今後の彼の活躍に、どうぞご期待ください!(HONZ編集部) 日のようにかなり平和な国であっても人は人を殺す。メディアは殺した人間をどのような人間であったのか、どのような趣味を持っていたのか、いかにも人を殺しそうな人間であったのか、はたまた普段は人当たりのよい人間だったのかと、盛んにそのパーソナリティに迫ってみせる。 そんな時、「どこにでもいる、あなたの隣にもいそうな人間が超凶悪な殺人犯でした! あなたも危ないかもしれません!」とただ危険を煽るだけだと問題でも生じるのだろうか、そこに何らかの特徴をつけて

    犯罪者を特定する因子は存在するのか? 『暴力の解剖学 神経犯罪学への招待』 - HONZ