にわかにTPPが争点に浮上してきた。野田首相が「次の総選挙のマニフェストに入れる」といったのに対して、民主党内では反対論が噴出している。他方、自民党の安倍総裁は「聖域なき関税撤廃ならTPP参加はありえない」という曖昧な表現を繰り返している。党内に賛否両論を抱え、これが争点になると党内がまとまらないからだ。逆にいうと、自民党の弱点であるTPPを争点にして闘うのが野田首相のねらいとすれば、なかなか巧妙な戦術である。 もともとTPP交渉参加は、争点になるような問題ではない。外交交渉への参加は首相の権限であり、閣議決定も必要ない。かつてのGATTのときも、その結果として出て来た米の関税化についてはもめたが、交渉参加が争点になったことはない。「交渉に参加したら負けるから参加しない」などと言っていたら、外交はできない。むしろ参加が遅れれば遅れるほど、負ける確率が高くなる。最近メキシコとカナダが正式参加