沖縄県・尖閣諸島の領空を中国国家海洋局所属の航空機が侵犯した。中国機による日本領空侵犯は初めてであり、中国が実力を行使して日本を威嚇した事態といえる。 力ずくで現状を変更する行動は、地域の平和と安定を覆す脅威であり、日本は断固たる対応を取るとともに、抑止の態勢を強めなければならない。 日本政府が中国政府に厳重抗議したのは当然だ。しかし、海洋局は「中国領空における海空一体のパトロール」だと発表している。習近平政権はさらなる恫喝(どうかつ)を行うとみられるだけに、日本は毅然(きぜん)と対峙(たいじ)し、屈服してはなるまい。 今回、航空自衛隊の戦闘機は侵犯機に対し緊急発進した。藤村修官房長官が「主権の侵害に断固として対応する」と述べた通り、政府は警戒監視を強め、領土防衛のための態勢強化を急ぐべきだ。 衆院選の最中にも、中国は、海洋監視船などにより尖閣周辺海域での領海侵犯を傍若無人に重ねている。今
北朝鮮が「衛星打ち上げ」と称する長距離弾道ミサイル発射の予定期間を7日間延長し、29日までにすると発表した。3段式ミサイルの1段目に「技術的欠陥」が見つかったためだという。 国連安保理決議は既に弾道ミサイル技術を使ったあらゆる発射を禁じている。無謀な発射を直ちに断念し、開発を全面停止するよう強く求める。 「技術的欠陥」はミサイルの根幹にあたるエンジン制御のトラブルとみられる。4月に発射直後に空中爆発したのも同じ3段式で、やはり1段目エンジンの不具合が原因とする見方がある。 失敗の原因究明と改良に数カ月~数年を要すると指摘されるが、北は8カ月後、あえて気象条件の悪い酷寒期を選んで発射を予告した。氷点下の屋外でミサイルを組み立てること自体にも、専門家は首をかしげる。 北の主張通り、平和目的の「衛星」としても危険極まりない。欠陥が判明してもなお、年内発射に執念を見せるのは金正恩体制の権威付けのた
北朝鮮の「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイルの発射予告をめぐり日米韓が緊急局長級会合を開き、最後まで北に自制を求めるとともに、発射が強行されれば国連安保理議長声明に基づき「断固とした行動」を取ることで一致した。3カ国が強い姿勢で結束したことを評価したい。 国際社会がこぞって発射阻止へと動く中で、北朝鮮にとり最大の友好国で影響力のある中国が煮え切らない態度を取っているのは極めて遺憾である。主要国として、安保理の常任理事国として無責任というほかない。 クリントン米国務長官は北大西洋条約機構(NATO)とロシアの外相級理事会で、発射阻止のため、北への圧力を強めるよう欧州諸国やロシアに呼びかけた。 潘基文国連事務総長も声明で、ミサイル発射は、弾道ミサイル技術を利用した一切の発射を禁じた国連安保理決議の「明白な違反だ」とし、北に警告した。 失敗に終わった今年4月の北のミサイル発射を受けた安保理の議
野田佳彦首相はプノンペンでオバマ米大統領との首脳会談に臨み、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)問題では日米の事前協議を加速することで一致し、日中関係では「大局観をもって対話を継続する」との基本的立場を説明した。 総選挙で審判を受ける首相の立場で踏み込んだ発言をしにくいのは当然だが、それにしてもTPP交渉参加を明言せず、日中で「対話継続」にとどまったのは極めて物足りない。 とりわけ尖閣諸島では、20日も中国の海洋監視船4隻が日本領海に侵入し、習近平新体制が攻勢を一段と強めているのは明白だ。首相はこの厳しい現実を踏まえ、尖閣防衛と実効統治の強化策や米軍再編など日米同盟強化の具体的行動で結果を出すべきだ。 会談の冒頭、オバマ氏は「日米同盟は地域の繁栄と安全の基礎」と強調した。これに対し、首相は「東アジアの安保環境は厳しくなり、同盟の重要性が増している」と応じ、オバマ政権のアジア太平洋重視外交を
約50カ国・機関が参加してラオスで開かれたアジア欧州会議(ASEM)の首脳会議が取りまとめた宣言に注目すべき文言が盛り込まれた。 尖閣諸島領有をめぐる紛争を念頭にしての「国際法に従い、威嚇や武力の行使をせず、対話などにより平和的解決を求める」との内容だ。中国の傍若無人な振る舞いへの歯止めにはなり得る。 中国は尖閣周辺の海域に連日、海洋監視船などを出し、領海侵犯を繰り返している。野田佳彦政権には、ASEM首脳会議で醸成された日本支持の動きをさらに広げる積極的な努力を求めたい。 地域情勢をテーマにした6日の協議で、中国の楊潔●外相が尖閣をめぐる日本の対応にふれ「反ファシズム戦争の成果が否定されてはならない」などと激しく攻撃した。野田首相は「日本固有の領土であり、解決すべき問題は存在しない」と応じた。 9月の尖閣国有化後、首相が国際会議の場で尖閣を「固有の領土」と表明したのは初めてで、即座に反論
インドネシアで発生した暴動で、邦人退避に備え、シンガポールに向かう航空自衛隊のC130輸送機。実際には退避活動を行うことはなかった=平成10年5月、愛知県・小牧基地 「小日本(シャオリーベン)(日本人の蔑称)を殺し尽くせ」「東京を血で洗え」 沖縄県・尖閣諸島の国有化を機に中国全土に広がった9月の反日デモ。過激なプラカードの言葉にあおられるかのように一部が暴徒化し、日系のデパートや自動車販売店を襲撃、上海では邦人に負傷者も出た。 「実際に『殺せ』といわれる恐怖感は、現地にいる者にしか分からない」 中国での勤務経験が長い大手商社幹部はこう漏らす。中国各地に事務所を置くこの商社は、国有化と同時に暴動発生を予想。出張自粛や公共交通機関の利用中止を指示する一方、安全情報の収集に追われた。 中国では2005(平成17)年4月にも、小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝を理由にデモが起きた。だが、商社幹部
韓国による島根県竹島の不法占拠問題を、国際司法裁判所(ICJ)に単独でも提訴するという野田佳彦政権の決断は一体、何だったのか。 李明博韓国大統領による8月の竹島上陸強行を受けて、この方針が打ち出されてから2カ月余、政府はいまだに実行に移していない。玄葉光一郎外相は、「韓国側の対応を注視している」と見送りともとれる発言さえした。野田政権の姿勢に強い疑念を抱かざるを得ない。 竹島が日本固有の領土であることは明白だ。昭和27年、李承晩韓国大統領が境界線を一方的に設定して以来の不法占拠である。 提訴をこれ以上先送りしては、日本の主張の本気度を疑われる。「方針は何一つ変わっていない」(藤村修官房長官)のであれば、速やかに提訴すべきだ。 韓国側にも日本との緊張を緩和しようという動きはある。 金星煥外交通商相は9月末の国連総会の演説で、「慰安婦」や「竹島」という言葉は使わず、日本を名指ししなかった。日韓
外交・安全保障を主題とした米民主党のオバマ大統領と挑戦者のロムニー共和党候補の最後のテレビ討論会で際立ったのは、アジア太平洋の「要石」とされる同盟国・日本について両氏が全く言及しなかったことだ。 大統領選の争点は内政が大半を占めるのが通例で、特に今回は空前の巨額債務を抱える中で雇用や経済再生策が問われている。そうした文脈で日本に触れずとも不思議はないし、初めてでもない。 だが、中国の急速な台頭にどう向き合うかに世界が注目し、現実に尖閣諸島をめぐる日中対立も起きている中で「日米同盟」も「日本」も登場しなかったことを日本政府は憂慮すべきである。 野田佳彦政権には同盟を強化し、対中抑止の実効性を高める方策に一層の奮起を求めたい。 討論では前半で中東情勢、イランの核開発問題などが論じられ、ロムニー氏は「4年間に世界のどこを見ても米国の影響力が弱まった」と批判し、オバマ氏は「ロムニー氏の主張は向こう
尖閣諸島をめぐり、鷲尾英一郎農林水産政務官が「中国政府が所有してもいい」と語った。 耳を疑う発言であり、看過できない。 郡司彰農水相は10日、誤解を招く言動は慎むよう注意し、鷲尾氏は「政府の国有化方針には賛成だ」などと釈明した。だが、これで一件落着にはならない。 まず中国の所有を認めるこの発言は「国家が所有することで安定的な維持管理ができる」とした尖閣国有化に関する政府の説明とも相いれず、中国側に誤ったメッセージを与えるものでしかない。 一方的に尖閣の領有権を主張している中国に所有が移れば、日本が領土そのものを失うことにつながるのは自明だ。 実効的に統治していることは「領土」の重要な要素であり、尖閣が日本の主権下であることを内外に示す決定的な意味がある。 中国が漁業監視船など政府公船による領海侵犯を常態化させ、尖閣北方海域に海軍艦艇を展開するなど、力の誇示で威嚇しているのも日本の実効統治を
来るべき衆議院選挙では、どのようなかたちになるにせよ、自民党が政権に返り咲く可能性が高い。しかし、その政権が、晴れがましい状況の中で楽々と華やかな政策を繰り出せるかといえば、そうではない。 最大の試練はいうまでもなく外交であり、尖閣問題への対処だろう。私見によるが、このままでは尖閣はうまくいって再度の棚上げ、下手をすれば世界中が中国の主張をそのまま認めることになりかねない。 先日、米紙ニューヨーク・タイムズに、有名コラムニストが中国側の「日本が1895年に戦利品として中国から奪った」という主張をうのみにして、「中国の立場に同情を感じる」と記した。あきれた話だと思うが、これを同紙の立場が中国寄りだからと、単純に決めつけられないところが問題なのである。 たとえば、英経済誌エコノミストなども、中国国内の日本企業攻撃には批判的だが、尖閣問題そのものに関しては中国の主張を一応は認めて、日中では歴史認
ミサイル駆逐艦など中国海軍艦艇7隻が4日、沖縄本島と宮古島の間を抜け太平洋に出たことを防衛省が確認した。 中国は、日本による沖縄県尖閣諸島の国有化に強く反発し、尖閣周辺で海洋、漁業監視船による日本領海侵犯を常態化させている。中国海軍艦艇が確認されたのは、尖閣からわずか約250キロの海域である。尖閣をにらんでプレゼンスを誇示するとともに威嚇する意図もあったのだろう。 野田佳彦政権はひるんではならない。監視と警戒を強め、領土・領海を守る備えを万全にしなければならない。 中国海軍はここ数年、東シナ海から沖縄近海を経て太平洋で訓練する外洋航海を繰り返している。尖閣国有化後では、9月19日から20日にかけて尖閣北方海域にフリゲート艦2隻を展開した。試験航行を重ねてきた中国初の空母「遼寧」も就役させた。いずれも計算ずくの力の誇示だといえる。 こうした中国海洋攻勢への牽制(けんせい)・抑止を狙って、米第
日中国交正常化40年はすなわち、日台断交40年の歴史でもある。1972年を境に別々の道を歩み、交わるはずのなかった「日中」と「日台」がこの夏、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)で交錯した。 8月15日、中国や台湾が領有権を主張する尖閣諸島に香港の活動家らが上陸し、中国国旗「五星紅旗」と台湾の旗「青天白日満地紅旗」を一緒に掲げたのである。親中派の香港実業家らがスポンサーだ。 満州事変から81年に当たる今月18日には、中国共産党序列4位で全国人民政治協商会議主席の賈慶林(か・けいりん)が、台湾の中国国民党名誉主席、連戦と南京で会談し共闘を呼びかけた。 賈「(日本の尖閣国有化は)両岸(中台)双方の民族感情を著しく傷つけた。違いを乗り越え、双方がそれぞれのやり方で領土を保全し、民族の共通利益と尊厳を守ろう」 連「台湾と大陸の人民の気持ちは同じだ」 対日配慮などから、尖閣問題での過激な抗議活動を押さ
訪米中の玄葉光一郎外相はクリントン米国務長官と会談後、韓国の金星煥外交通商相を交えた日米韓外相会談を行った。3カ国は東アジアで日米韓の協力を深め、北朝鮮に対し連携して対応する方針を確認した。 日本は韓国と慰安婦や竹島問題で、中国とは尖閣諸島問題で対立が深まっているが、「共通利益や価値で結ばれた同盟国」(クリントン長官)である日米、米韓がその原点に戻って対話と協力の必要性を確認し合ったことは評価できる。 とりわけ北の核・ミサイル開発や拉致問題の解決に3カ国の協調は欠かせない。中国の強引な海洋進出に対抗する上でも、日米、米韓同盟に日韓を加えた連携が肝要だ。野田佳彦政権は領土・主権などでは決して譲らぬ一方で、日米韓の協調と連携の速やかな回復に知恵を絞ってもらいたい。 玄葉氏は前日の27日、金氏と日韓外相会談を行い、竹島、慰安婦問題とも双方の主張は平行線に終わったが、「緊密な意思疎通を図る」ことで
尖閣問題に端を発した中国の反日デモや抗議行動はついに日系企業への破壊、略奪行為にまで発展した。民衆が、政府や国民に向かって行動的な意思表示をするデモ行進まではいい。だが、特定の存在物に対して破壊・略奪行為を働くことは、一応、憲法をもつ国・国民として「あるまじき行動」である。 そうした行為が「愛国無罪」などという、現代国家では信じられないような言葉や法概念で許されるのだとしたら、もうなにをかいわんやである。 戦後の日中国交正常化に向けて実に多くの人々が辛労を尽くした。例えば、岡崎嘉平太氏(元全日空社長)。隣国中国との国交断絶状態を憂い、貿易という場を利用した交流を発案し、国交樹立へとつなげた「陰の立役者」だ。その後は、日中経済協会(現在の会長は張富士夫トヨタ自動車会長)を立ち上げ、経団連なども巻き込んで中国の経済発展に貢献してきた。 また、日本の大経営者である松下幸之助氏も陰ひなたなく経済支
日中国交正常化40年を迎えた。眼前に広がる世界には、この地域の覇権を握りたいという「帝国主義的」ともいえるむき出しの中国の野望が見え隠れしている。 日本固有の領土である沖縄県尖閣諸島の奪取を狙う動きがそれを象徴する。中国公船による尖閣領海侵犯の常態化や反日デモと略奪、日本製品不買といった一連の行動は、日本の尖閣国有化が引き金とされるが、荒々しい膨張を続ける中国パワーの発露という本質を見誤ってはならない。 40年前、最貧国だった中国は切迫するソ連の脅威を前に対日関係の正常化を急いだ。賠償請求権を放棄し、尖閣などの領土・領海問題も棚上げして、日本の援助をテコに富国強兵路線を邁進(まいしん)した。 ≪「友好」の自縛解き放て≫ だが、それは「中華帝国再興」のための方便でしかなかった。富強路線が軌道に乗り始めた1990年代からは、日中戦争の過去を強く糾弾しだし、尖閣を自国領と明記した領海法も制定した
明日29日、日中国交樹立40周年を迎える。本来なら日中友好の節目を画す祝賀ムードに包まれるはずなのに、尖閣諸島問題に端を発した反日デモなどで、在留邦人は身の危険にもさらされている。進出した日本企業の工場や店舗も破壊された。中国は、10月にも予定される次期中国共産党大会の日程さえまだ発表されないという、内政上の異例の不確実性の中にあり、国民の間に潜在する様々(さまざま)な不満も鬱積している。反日デモが反体制の動きを引き起こしかねないことを恐れる中国当局は、デモを規制しつつ、国民の不満が全土の反日デモで燃え尽きてくれたなら、と期待している。正しい歴史的選択だったか この40年、日本外交はほぼ一貫して中国との友好に努めてきたにもかかわらず、その結果がこのありさまである。となると、尖閣国有化といった個別の問題を超え、日中国交樹立そのものが正しい歴史的選択だったのかが、今こそ、原点に遡(さかのぼ)っ
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