東京電力福島第一原子力発電所から汚染した地下水が海に流出している問題で、安倍首相は7日、茂木経済産業相に対し、東電の汚染水対策を全面的に支援し、早期に流出を止めるように指示した。 東電は9日から敷地内で汚染した地下水をくみ上げ、流出防止を試みる。経産省は汚染源の原子炉建屋周辺に地下水が流れ込むのを防ぐ「凍土壁」の設置を急ぐため、2014年度予算の概算要求に関連研究費を盛り込む。 指示は7日の原子力災害対策本部で行われた。安倍首相は「(汚染水対策は)東京電力に任せるのではなく、国としてしっかり対策を講じる。経産相はスピード感を持って東電を指導し、迅速かつ確実に重層的な対策を行ってほしい」と述べた。東電の対応が後手に回り、汚染水問題解決のめどが立たないことから、国が予算を投入し、積極的に関与する方針に転換した。
火山災害対策 大噴火へ十分な備えが必要だ(5月20日付・読売社説) 火山噴火への危機感が薄れていないか。 内閣府の有識者会議がそう警告し、政府などに火山対策の整備を促す提言をまとめた。 東日本大震災の後、地震や津波対策が注目されているが、有識者会議の提言は、火山にも十分な警戒が必要だと強調している。 もっともな指摘である。 日本には110の火山がある。うち47火山は、今後100年程度の間に噴火する可能性があり、気象庁が地震計などを設置して、監視・観測を続けている。 政府は2008年、47火山の周辺自治体に、避難計画を検討する「火山防災協議会」を地方気象台などと設けるよう求めた。ところが、まだ26火山にしかない。 住民の避難計画があるのは、桜島(鹿児島県)と霧島山(宮崎、鹿児島県)の周辺自治体だけだ。取り組みの加速が急務である。 火山大国の日本では、9万年前に阿蘇山が噴火し、九州全域が溶岩に
原子力防災 実効性ある対策作りを急げ(10月7日付・読売社説) 東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を、今後の原発防災対策に生かさねばならない。 新設の原子力規制委員会が、原発事故時に住民を守るための新たな「原子力災害対策指針」案をまとめた。 規制委は指針を月内に最終決定する方針だ。関係市町村は、これに沿って来年3月までに地域の原子力防災計画を策定する。 最大のポイントは、原発事故に備えた防災対策の重点範囲を従来の「半径8~10キロ圏内」から「30キロ圏内」に拡大した点だ。国際原子力機関(IAEA)が提唱する防災基準に沿っている。 指針案により、防災対策を求められる市町村は、45から135へと急増する。これまで原発の防災とは無縁だった地域もある。 福島第一原発事故では、政府や市町村の避難指示が大混乱し、住民は長時間、転々と移動させられた。食糧供給などがないまま、1週間以上、屋内退避を強い
原発被害賠償 和解による早期救済が大切だ(10月1日付・読売社説) 東京電力福島第一原子力発電所の事故の被害者が、適切かつ迅速に救済されるよう、紛争処理の体制をさらに充実させていくことが大切だ。 今回の原発事故を巡っては、9月下旬までに94万件の賠償申請が東電にあり、そのうち86万件で合意に達した。賠償総額は1兆2400億円に上り、今後も増え続ける。約16万人を避難に追いやった事故の深刻さを物語っている。 賠償金は、政府が立て替え払いしたうえで、東電に請求する仕組みだ。政府の原子力損害賠償紛争審査会が定めた指針が、算定の基準となる。避難に要した交通費などの実費、仕事を失った農家や事業者の損失などが対象だ。 こうした初期の賠償交渉での合意率は高いが、被災者が納得しないケースも少なくない。 東電との交渉がうまく運ばない場合に、仲裁を託されるのが、審査会の下部組織である「原子力損害賠償紛争解決セ
東海、東南海、南海地震などが同時発生するマグニチュード(M)9級の「南海トラフ巨大地震」について、国の二つの有識者会議は29日、地震・津波による死者数や建物被害、津波の浸水域、津波高を公表した。 死者数は最大で32万3000人にのぼり、都府県別では静岡県が10万9000人で最多。原因別では津波による死者が最も多く23万人。建物被害により自力で脱出できず、救助が必要になる人は31万1000人と推定された。 全壊したり、焼失したりする建物は最大の場合、238万6000棟。浸水域は最大で1015平方キロ・メートルと東日本大震災(561平方キロ・メートル)の1・8倍になる。 この巨大地震は、最新の科学的知見をもとに、南海トラフ沿いで起こりうる最大規模の地震・津波として想定された。有識者会議は今年3月に各地の震度分布や津波高を公表したが、今回はより精度よく震度や津波高を計算し、浸水域も求めた。さらに
被災地集団移転 官民の知恵と能力を結集せよ(7月31日付・読売社説) 東日本大震災の復興事業は時間との闘いでもある。復興が遅れるほど、故郷を見限り、離れる住民が増えてしまう。 事業別に工程表を示すことなどで、被災者が将来に希望を持って地元に住み続けるようにすることが大切だ。 大震災から1年4か月以上を経て、津波被災地での防災集団移転促進事業がようやく動き出す。最も進捗(しんちょく)が見られる宮城県岩沼市の6集落の移転事業で、移転先の宅地造成が8月5日に始まる。 読売新聞の7月上旬の調査によると、岩手、宮城、福島3県の26市町村で約2万6000戸が集団移転の対象だが、このうち政府の同意を取り付け、事業化が決まったのは22%にとどまっている。 住民の合意形成に時間を要したり、自治体の技術系職員の不足から移転先の土地確保などの手続きが遅れたりしているためだ。 昨年度の復興関連予算約15兆円のうち
地震の研究 観測強化を防災対策に生かせ(7月31日付・読売社説) 国民の生命や財産を守るために、今度こそ、有効な研究を進めたい。 政府の地震調査研究推進本部(本部長・平野文部科学相)が、地震や津波の調査研究に関する「基本方針」の見直し案をまとめた。 推進本部は、防災・減災対策の一環として、どこで、どんな地震が起こるかを調査、評価している。基本方針は、その手法や関係府省の分担を定めたものだ。 見直し案は超巨大地震の発生を前提に、海底に地震計を増設するなど観測網の強化を打ち出した。各地の揺れや津波が、どれほど大きくなるかを、あらかじめ見積もれるようにするのが目的だ。 速報の予測技術の改良や高度化にも取り組む。東日本大震災では当初、気象庁が津波の高さを低く予報したり、余震の緊急地震速報が誤ったりした。 マグニチュード9だった大震災の教訓を踏まえれば、妥当な内容と言えよう。 現行の基本方針は200
使い慣れた言い回しにも嘘(うそ)がある。時は流れる、という。流れない「時」もある。雪のように降り積もる◆〈時計の針が前にすすむと「時間」になります/後にすすむと「思い出」になります〉。寺山修司は『思い出の歴史』と題する詩にそう書いたが、この1年は詩人の定義にあてはまらない異形の歳月であったろう。津波に肉親を奪われ、放射線に故郷を追われた人にとって、震災が思い出に変わることは金輪際あり得ない。復興の遅々たる歩みを思えば、針は前にも進んでいない。いまも午後2時46分を指して、時計は止まったままである◆死者・不明者は約2万人…と書きかけて、ためらう。命に「約」や端数があるはずもない。人の命を量では語るまいと、メディアは犠牲者と家族の人生にさまざまな光をあててきた。本紙の読者はその幼女を知っている。〈ままへ。いきてるといいね おげんきですか〉。行方不明の母に手紙を書いた岩手県宮古市の4歳児、昆愛海
鎮魂の日 重い教訓を明日への備えに(3月11日付・読売社説) 大震災から1年、鎮魂の日を迎えた。政府主催の追悼式が東京で行われるほか、被災地でも式典が予定されている。 午後2時46分、亡くなられた方々のご冥福を祈り、心からの黙とうを捧(ささ)げたい。 犠牲者は1万5854人にのぼる。行方不明のままの人も3100人を超す。いまだに肉親を捜し求める人たちの悲しみはいかばかりか。胸が痛む。 ◆被災地の復興に「落差」◆ 宮城県石巻市の沿岸部。津波で破壊された防潮堤が無残な姿をさらし、巨大ながれきの山と、無数の廃車の集積地が目に入る。 海に面した工場地帯と、内陸側に続く住宅街は、ほとんどが津波にさらわれた。再建にこぎつけたところはほんのわずかである。 近くの漁港は岸壁の一部が海に沈んでいた。漁は再開できたが、網にはしばしば、がれきがかかるという。漁船の船長は「港で加工業者が営業を再開すれば、活気も戻
遅れる復興 政府と被災地の「落差」解消を(3月5日付・読売社説) 東日本大震災の復興関連の補正予算はすべて成立し、復興交付金や特区の制度も整った。先月10日には政府の司令塔たる復興庁も発足した。 だが、肝心の予算の執行は進まず、制度の活用も不十分で、被災地の復興は依然、遅れている。 読売新聞の世論調査では、復興が「進んでいない」と見る人が72%に上った。特に、東北地方では78%と高かった。 ◆東北に寄り添おう◆ その原因については、「原発事故の影響が大きい」「被害の規模と範囲が大きい」に次いで、「政府の対応に問題がある」との回答が61%もあった。 政府・与党は、これらの数字を重く受け止め、復興事業の加速に全力を挙げるべきだ。 政府は、総額1兆8500億円の復興交付金の第1弾として、2509億円の配分を決めた。 災害公営住宅の建設、高台への住宅集団移転といった緊急性の高い事業が中心で、宮城、
内閣府公文書管理委員会(委員長・御厨貴東大教授)は29日午前、東日本大震災に関連する10組織の会議で議事録が未作成だった問題で、関係者からの聞き取り調査結果を公表した。 災害対応に追われていたことや、公文書作成への認識不足が理由にあげられている。 10組織のうち、議事録に加え議事概要も作成していなかったのは、原子力災害対策本部、緊急災害対策本部、被災者生活支援チームの3組織。原子力災害対策本部の関係者は「多忙を極めており、記録を取る意識が希薄だった」と説明した。 緊急災害対策本部は「議事録や議事概要は公文書管理法上、作成義務が課せられていないものと理解している」と述べ、法的な問題はないと釈明。被災者生活支援チームも「決定や了解を行う会議ではない。議事録や議事概要は作成義務は課せられていない」などとしている。
阪神大震災17年 二つの重い教訓を次の備えに(1月16日付・読売社説) 阪神大震災の惨禍からあすで17年。被災地は鎮魂の日を迎える。 人々の祈りには、被災から10か月たった東日本大震災の犠牲者への深い哀悼と、確かな復興の願いも込められることだろう。 「1・17」の教訓は「3・11」に生かされているのだろうか。 大地震に不意打ちされたのが阪神大震災だった。「関西に大地震は来ない」という安心ムードがあり、備えは十分でなかった。 古い木造住宅などの耐震化は進んでおらず、死者6000人余の8割以上は家屋倒壊や家具の転倒による圧死だった。密集市街地の放置は火災の拡大を招いた。 兵庫県は3年前、復旧・復興過程を検証して100の教訓にまとめた『伝える 阪神・淡路大震災の教訓』を出版した。 災害初期には、地域住民が消防や警察と連携して救助に当たったり、高齢者ら「要援護者」の安否確認や避難を優先的に行ったり
世界最速のスーパーコンピューター「京」を活用し、巨大地震・津波の複合災害を総合的に予測するシステム開発に、東京大学地震研究所が今年4月から乗り出す。 震源域ごとに約1000通りの巨大地震・津波の発生パターンを分析し、精緻な被害想定や住民の避難につなげる。 同研究所は「想定外を無くす」ことを目指し、「巨大地震津波災害予測研究センター」を今年4月に発足させる。ここで地震・津波の発生や建物被害、避難状況など、従来はデータ量が多すぎるために別々に行っていた分析を統合し、より現実に近い予測システムを構築する。具体的には、個々の建物の形状や構造のデータなども「京」に入力し、地域全体の建物被害を計算。揺れで建物が倒れ、道路が不通になった場合なども想定して、津波襲来時の住民の避難予測にも反映させる。
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