米軍の沖縄基地内でヘリが墜落した。このニュースをめぐってNHKの21時からの番組では、「オスプレイ反対の中」という枕詞(まくらことば)を掲げたうえ、現場の若い記者が「もどかしい」と言い、「占領意識丸出し」という関係者のコメントを放送した。 NHKの「国内番組基準」では「公共放送の機関として、不偏不党の立場を守って」としたうえで「意見が対立している公共の問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにし、公平に取り扱う」としているが、いかがだろう。 同じ5日、尖閣周辺では中国公船が、立ち入り検査まがいの行動で「管轄権」を主張した。3日にはヨットが領海侵犯、絶えず国境が脅かされている。 米軍沖縄基地は、日本の安全保障のみならず、地政学的にアジアの平和を担保する要である「事実」を冷静に伝えたい。(副編集長 黒沢通)
昨年の原爆忌、広島と長崎で開かれた平和式典に、原爆投下を命じたトルーマン元米大統領の孫に当たるクリフトン・トルーマン・ダニエルさんが出席して、話題になった。今年の外国人参列者の「主役」は、米映画監督のオリバー・ストーンさんだろう。 ▼社会派監督として知られるストーンさんは昨年、第二次世界大戦前夜からオバマ大統領の登場までを、独自の視点で追いかけたドキュメンタリー「もうひとつのアメリカ史」を制作した。そのなかで、日本への原爆投下の主たる目的はソ連への牽制(けんせい)であり、軍事的な必要性はなかったと主張している。 ▼全米で論争を引き起こした番組の脚本は、アメリカン大学歴史学科のピーター・カズニック教授と共作した。カズニックさんは毎年夏、学生を連れて広島、長崎を訪れており、今回ストーン監督も同行したというわけだ。 ▼1995年、ワシントンのスミソニアン博物館が「原爆展」を企画したところ、退役軍
久々にぎょっとした。朝日新聞など一部メディアが繰り広げている「麻生太郎副総理ナチス発言」祭りに、である。きのうの朝日新聞を見ると、1、2面と政治、社会面、それに社説まで動員しての大騒ぎである。 ▼麻生氏は7月29日、都内で開かれたシンポジウムで「ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気がつかないで変わった。あの手口を学んだらどうかね?」と発言した。確かに字面だけをみれば、あたかもナチスの手法を称揚しているようにみえる。 ▼在米のユダヤ系人権団体が「どのような手法がナチスから学ぶに値するのか」と非難したのもうなずける。しかも、ナチスは憲法を改正も制定もしておらず、形の上でワイマール憲法は戦後まで存続していた。 ▼首相経験者であり、しかも政権の柱である副総理として軽率極まりない。ただ、彼の肩を持つ義理はないのだが、前後の発言を詳しく点検し、当日会場にいた記者や傍聴者の話を聞
麻生太郎副総理兼財務相が、憲法改正の運び方をめぐる発言で、ドイツのナチス政権を引き合いに出した。お粗末な失言であり、撤回したのは当然である。 発言は日本のイメージや国益を損なった。麻生氏は重職にあることを自覚し猛省してほしい。 失言の重大さに加えて指摘したいのは、憲法改正論議そのものが水をさされる事態を避けなければならないことだ。 安倍晋三政権の「右傾化」と結びつけようとする批判などは論外だ。首相や自民党は、引き続き国民の理解を求め、憲法改正の重要性を主張していくべきだ。 麻生氏は「ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口を学んだらどうかね」と語った。撤回したコメントではナチスについて「極めて否定的に捉えている」と釈明した。 発言の全文を読めば、麻生氏にナチスを正当化する意図がないことは明らかだ。しかし、「学んだらどうか」といった、ナチスの行
原子力規制委員会が活断層と評価した日本原子力発電敦賀原発(福井県)の敷地内破砕帯について、原電の依頼を受けて第三者の立場から調査していた海外の専門家などによる検討チームの最終報告がまとまり1日、公表された。原電が7月に規制委へ追加提出した調査報告を「新たな知見」と評価した上で、敷地内破砕帯について「活断層ではない」と結論付けた。 検討チームは、原電が追加報告した火山灰の降灰時期などを特定した新データを検証。土壌に含まれた温暖期植物の花粉分析などを通し、より正確に規制委の求める12万年前以降の活動がないことを証明した。 検討チームは、海外の地質学などの専門家を中心にした13人からなり、今年3月から現地調査などによって独自に破砕帯が活断層かどうかを検証してきた。 リーダー役の地質学者、ニール・チャップマン教授は「規制委と異なる結論に至ったのは、原電が示した新証拠によるところが大きい。新証拠は原
米カリフォルニア州グレンデール市で慰安婦の少女像が設置された。ソウルの日本大使館前に設置された「慰安婦の碑」と同じデザインで、事実誤認に基づく日本非難の意味が込められている。碑の撤去を求めたい。 同市はアルメニア系と韓国系住民が多く、日系人は少ない。像の設置は、アルメニア系と韓国系が共闘した結果とされる。設置前の公聴会で日系人が反対したが、議会の賛成多数で設置が決まった。 韓国系団体は前市長を韓国に招くなど徹底したロビー活動を行った。これに対し、在ロサンゼルス日本総領事館は、市長や市議に対し、昭和40年の日韓基本条約に基づく請求権協定で賠償問題が解決済みであることなどを説明し、像設置の不当性を指摘した。 在外公館として最低限のことはしたかもしれないが、なお不十分だ。ソウルの慰安婦の碑が日本の尊厳を傷つけている事実などを指摘し、像設置に警告し反対すべきだった。今後も撤去を求めなければならない
個人の商品購入履歴など膨大な情報の集合体を指す「ビッグデータ」の取り扱いが大きな議論になってきた。 活用次第で社会に大きな利益を生むと期待されるビッグデータだが、最大の問題は、取り扱い方について確立された統一基準がないことだ。 対応を誤れば深刻なプライバシー侵害も懸念される中で、対策を保有企業などの良識に頼る現状は危うい。将来に禍根を残さないためにも、しっかりとしたルールづくりを急ぐべきだ。 データは国をまたいで行き来する時代である。国別の基準づくりにも限界がある。少なくとも、日米欧の先進国レベルでは、基本的な考え方を一致させておく必要があるだろう。 ビッグデータはパソコンやスマートフォン(高機能携帯電話)など、あらゆる電子機器から日々発信され、電子情報の倉庫ともいえるサーバーに蓄積されている。 ポイントカードの利用は代表例だ。カード発行時に得た個人情報と商品購入履歴を突き合わせることで、
長年の研究開発の苦労が実り、新製品が大ヒット、わが世の春を謳歌(おうか)する企業があった。ところが、その製品に重大な欠陥が見つかってしまう。消費者にそっぽを向かれ、業績は悪化するばかりだ。 ▼その企業には、もうひとつの悩みがある。3人のかつての経営者の存在だ。直属の部下を連れて飛び出したAさんは、別の会社を立ち上げた。といってもかつての「剛腕」のイメージは失われ、経営は苦しそうだ。社長時代から常識はずれの言動が多かったBさんは、今もマスコミの格好の標的となって、会社の信用低下に一役買っている。今も会社に籍を置くCさんは、現経営陣の方針に逆らって、やりたい放題だ。 ▼民主党をモデルに、こんな筋書きの経済小説が書けるかもしれない。A、B、Cが、小沢一郎、鳩山由紀夫、菅直人の3氏であることはいうまでもない。とりわけ参院選で喫した大敗について、菅元首相の責任は重いといえるのではないか。 ▼東京選挙
■憲法改正への姿勢見極めたい 参院選の投票日を迎えた。今世紀前半の日本の政治動向にもかかわる選挙の重みを感じながら、有権者は棄権することなく、投票所に足を運んでほしい。 最大の注目点は、衆参のねじれが解消され、「政権の安定化」が図られるかどうかだ。忘れてならないのは、日本が繁栄と安全を確保していけるかどうかの岐路に立たされていることである。 デフレから脱却して景気を回復軌道に乗せられるのか、中国が力ずくで奪取を図ろうとする尖閣諸島を守り抜けるのか。これがかなわなければ、国家再生を望むことは難しい。 ≪日本の岐路を直視せよ≫ 安倍晋三首相が進めるアベノミクスの評価や憲法改正への取り組みなど各党は一定の方向性を示した。内外の危機を克服できるのはどの政党なのかを十二分に見極めることが求められる。 どの程度の時間が割かれたかはともかく、最大の争点の一つは国民の間でも支持が拡大している憲法改正だった
歴史認識をめぐる問題も参院選の争点だ。 日中、日韓関係が安倍晋三政権になっても冷え込んでいることが問題視されているが、関係改善を焦るあまり、中韓両国の思惑に引きずられない姿勢が必要だ。 安倍首相(自民党総裁)はテレビ討論などで「それぞれの国がそれぞれの歴史に誇りを持っている。互いに尊重し合うことが大切で(歴史問題を)外交カードに使うのは間違いだ」と主張している。国の指導者として、当然の認識だ。 野党の多くは首相を批判している。民主党の海江田万里代表は「首相はいろんな国を回ったが、肝心の中国、韓国とまだ会談が行われていない」と指摘した。細野豪志幹事長も「首相は村山談話、河野談話の見直しに言及した。談話を尊重しながら具体的な外交に入るべきだ」と述べている。 他の野党も「歴史修正主義をかざしたら、日本は絶対負ける。(対)中韓外交の基本はそこだ」(渡辺喜美みんなの党代表)、「国際的に孤立を深めてい
韓国の朴槿恵大統領は就任して以来、恒例の訪日を避けており、米国訪問の次には中国を訪れている。日本には、「歴史認識について反省がない」という理由で、殊更、背を向けているようだ。韓国報道機関の論説委員たちとの会合で、「(日韓首脳)会談後に独島(竹島=島根県隠岐の島町)、慰安婦問題が再燃するようなことになれば、関係が余計に悪化しかねない」と語ったという。 ≪卑下の姿勢が要求招く悪循環≫ 中国政府も日本側に、「尖閣諸島(沖縄県石垣市)問題で譲歩がなければ首脳会談はしない」と打診してきた。安倍晋三首相は「問題があるなら向こうから話をすべきで、条件付きの話し合いには応じられない」と断った。 民主党の菅直人政権下、中国漁船が日本の巡視船に体当たりしたビデオを公開せずに、船長らを早々に特別便で帰国させた。これは胡錦濤国家主席の訪日を実現させるためだったことが後に判明した。菅首相がへつらうかのように「胡閣下
参院選における少子化議論があまりに低調だ。各党とも危機感が欠如しているのではないか。 昨年の年間出生数は103万7千人余と過去最低を更新した。政府の推計によれば減少はこれからが本番だ。50年後には50万人を切るとされる。このまま子供が生まれにくい状況が続けば、日本の社会は立ちゆかなくなる。 少子化は「国家の危機」との認識に立ち、出生数増に向けてどう取り組むのか、各党には具体策を示してもらいたい。 各党の公約には、待機児童の解消や仕事と子育ての両立支援などが並ぶ。自民党は待機児童解消について「2017年度末までに約40万人分の保育の受け皿を新たに確保する」と具体的数値を掲げた。重要な施策だが、これらは子供が生まれてからの対応だ。 いま求められているのは、生まれてきた子供をいかに大事に育て上げるか以上に、子供が生まれてこない現状の打開である。 日本の少子化は、未婚・晩婚が最大の要因だ。早急に手
アフリカ北東部のソマリア沖海域における海賊対処活動が、ひとつの転換点を迎えている。この海域で猛威を振るった海賊行為は確実に減少している。今年1月~6月末の海賊行為などの発生数は8件、乗っ取られた船舶の数は2隻で、拘束された乗組員はいない。昨年同期の発生数69件、一昨年同期の163件と比較すると、「激減」といっていいだろう。 ≪海自活動は海賊排除に貢献≫ 海上自衛隊は2009年から、護衛艦2隻を派遣して、海賊多発海域であるアデン湾を通航する民間船舶の護衛を行うとともに、P3C哨戒機2機による上空からの警戒監視に当たってきた。海自を含む各国部隊の活動はこの海域から海賊を排除することに成功したといえよう。 だが、海賊は根絶されたわけではない。アデン湾から締め出された海賊は、インド洋という広い舞台に出ていくようになっている。海賊の行動に関する歴史的な推移を踏まえれば、犯行の手口や出没海域を変え、再
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