「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜 早川 タダノリ (著) 税込価格:1,944円 出版社:青弓社 ISBN:978-4-7872-2065-3 近年、目に触れる機会が異常に増えた「日本スゴイ」本。 本書は、この「日本スゴイ本」を歴史的にさかのぼり、とくに1925年から1945年までに刊行された「日本スゴイ本」を「日本主義」「礼儀」「勤労」など現代の「日本スゴイ本」に見られるキーワードごとに整理し、その内容をいじわるな目線で吟味するもの。 しかも親切にも、古典的名著は完全排除し、歴史のごみ箱に捨て置かれたようなくだらない本、知っていても役に立たない本、人類の運命にとってはどうでもいい本を厳選し、紹介してくれています。 とくにわたしが好きなのは、1933年に出版された『日本人の偉さの研究』。 あらゆる領域で日本と日本人の世界一ぶりを列挙した本なのですが、ひときわ目を引くのが「
実は正確な書名は「日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか(著者岩瀬昇)」 これは書評ではなく、この本を参考に日頃考えていることをまとめてみた。 アメリカが昭和16年夏に石油を全面禁輸したことが日本を対米戦に駆り立てた決定的要因であったことはよく知られている。昭和天皇独白録でもこのことに触れている。 だがアメリカの石油禁輸と日本の対米開戦決断の関係については誤解している人が多い。日本はアメリカが石油を全面禁輸したのに逆上して開戦決意したわけではないし、テキサスの油田を取るために開戦決意したわけでもない。 戦前日本の石油自給率は低く産地は僅かに新潟と北樺太(ソ連領であったが日本は石油採掘利権をもっていた)だけであったし、比較的近い石油産地と言えば蘭印(インドネシア)しかなかった。しかも宗主国オランダは前年5月ドイツに占領されたので蘭印は半分空き家というのが日本の認識であった。 そもそも日
小説としては駄作である。正味200ページ足らずで、パラパラに組まれた1人称のモノローグで書かれている田中角栄伝は、巻末に列挙されている資料を読めば誰でも書ける。ただ著者が、なぜ人生の最期に近くなって田中論を書いたのかという意図は、「長い後書き」に書かれている。 日本の高度成長期に、それを支えたテレビや高速道路や新幹線をつくったのは、田中だった。彼が議員立法で40本も法律をつくった記録は、いまだに破られていない。日本の政治家のほとんどが官僚のつくった法律に文句をつけるだけなのに対して、田中は憲法の理想とするlawmakerとして、ずば抜けた能力を発揮したのだ。 彼の政治哲学はナショナリズムだった、と著者はいう。エネルギー資源に乏しい日本が発展するためには原油の確保が必要だと考えて中東外交を積極的に行ない、原子力開発のために地元に交付金を落とすシステムをつくった。しかしそれは日本を支配下に置こ
ここ数年、買い手としての自分と売り手としての自分との間に、上手く折り合いをつけられずにいる。一消費者としての立場から考えると、様々なコンテンツが安く、便利に手が入るようになったことは間違いなく喜ぶべき状況である。だが、広告屋としての売り手の立場から考えるとコンテンツが安くなる状況というのは、決して喜ぶべき状況ではない。 ただ喜ぶべき、もしくはただ憂うべきだけの状況だったら、まだ対処のしようもあるだろう。だが先行きが不透明なまま、もどかしさにかまけて身動きが取れないというのが実情だったりする。そして売るものも買うものも安くなっていく現象は、特定の産業のみに起こるものなのか? 世界全体の富の総量は増えていくのか、減っていくのか? それらの変化に伴い、人間の根源的な欲求は変わりうるのか? 疑問は尽きない。 本書は文明評論家として名高いジェレミー・リフキンが、今起こっている経済パラダイムの変換から
自分が好きな作家(小説家、映画監督、漫画家など)が絶賛しているというだけで、その作品についついお金を出してしまうということがあります。 最近で言えば、東村アキコさんが絶賛したマンガ『僕の変な彼女』が掲載されているマンガ誌『モーニング』。 <東村アキコさん絶賛 モーニングの新人賞受賞作「僕の変な彼女」Webで公開され話題に> わたしは、マンガ大賞2015に選ばれた『かくかくしかじか』で知られる漫画家の東村アキコさんが好きなのですが、その東村さんがTwitterで「私の読んだ漫画の、人生読み切りベスト10いや、ベスト3に入る傑作」と絶賛したのが『僕の変な彼女』。 東村さんが絶賛したからには…という期待のもと、このマンガを読むためだけにモーニングを購入しました。 ちなみに、今は「週刊Dモーニング」で全ページが無料で読めるようになっていますので興味を持たれた方はぜひ。一読の価値ありです。 このよう
本書の史実にはいろいろ誤りが指摘されているが、発想はおもしろい。明治維新の実態は、長州の狂信的なテロリストが尊王攘夷というカルト思想にもとづいて徳川幕府を倒した内戦だった。「明治維新」という言葉も同時代にはなく、「昭和維新」のテロリストたちが使い始めたものだ。 その教祖とされる吉田松陰が、松下村塾を開いて「明治の元勲」を教育したというのも神話である。1842年に松下村塾を開いたのは玉木文之進で、松蔭は1857年にその塾頭となったが、翌年投獄されたので塾は廃止された。だから彼が塾の指導者だったのは1年余りで、彼が直接教育した著名人は高杉晋作と久坂玄瑞ぐらいだが、久坂が松蔭を尊王思想の教祖にまつり上げたのだ。 「維新」や「攘夷」という言葉は松蔭のオリジナルではなく、水戸学の受け売りである。この始祖は「水戸黄門」として有名な徳川光圀だが、彼は地元では暴君として知られていた。日本の歴史をすべて天皇
民主党政権の混乱がやっと終わったと思ったら、今度は自民党の(昔のように)何もしない政治が始まった。最初は力を入れていた「大胆な金融緩和」に効果がないと知った首相は、増税による「景気の腰折れ」を防ぐと称して、昔のバラマキ公共事業に回帰してしまった。来年度予算は、シーリングもなしだ。 このような民主政治の前提とする「国家の主権者は合理的な個人であり、彼らの民意を正確に集計して政治に反映させる」という論理はフィクションである、と著者は断定する。実際の政治は、自律性も合理性もないできそこないの個人が付和雷同して決めるものであり、民主政治は危険な統治機構である。 さらに危険なのは、「人権」や「平等」を求めて、自分たちの正義を社会に押しつけようとする大衆人である。彼らはその人権なるものが「神から与えられた」神聖で不可侵の自然権だと主張し、このような信仰にもとづいてフランス革命が行なわれ、多数派からなる
新幹線とナショナリズム (朝日新書) 作者: 藤井聡出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2013/08/09メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る Kindle版もあります。今回僕はこちらで読みました。 新幹線とナショナリズム 作者: 藤井聡出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2013/08/09メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 内容(「BOOK」データベースより) 新幹線はナショナリズムでつくられた。世界に冠たる日本復活のために、いまこそナショナリズムを喚起し、新幹線ネットワークの整備を急げ。新幹線が通っている都市は発展し、通っていない都市は衰退する。ローマも中国も、交通投資をすることによって発展した。新幹線は「豊かさ」をもたらし、さらには精神的結びつきも強くする。経済発展のほかに、私たちが得るものは何か。新幹線で読み解くナショナリズム論。
このタイトルを見て、いま世界一有名な歴史学者が日本についての本を出したのかと思う人もいるかもしれないが、ご心配なく。彼のテーマは「西洋文明の衰退」である。18世紀に中国が西洋に覇権を譲ったように、いま西洋は新興国に覇権を譲ろうとしている。それは宿命かもしれないが、避けることはできないのだろうか――これは西洋文明のコピーである日本にも共通の課題である。 欧米の経済的停滞を金融・財政政策で是正できると主張するクルーグマン(著者の論敵)などの経済学者を著者は嘲笑し、そういう政策が一時的に衰退を止めることはできるかもしれないが、問題はもっと深く大きいと論じる。それは西洋文明のエンジンだった国家の劣化なのだ。 これは「見えざる手」が社会の主役だと信じる経済学者の見解とは違うが、歴史的事実である。イギリスを初めとする西洋諸国が、彼らよりはるかに洗練された文明と豊かな富をもっていた中国を追い抜いて世界を
映画、旅、その他について語らせていただきます。 タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。 日本において、学校体育で柔道ほどたくさんの死者が出ているスポーツはほかにありません。ボクシングなども危険なスポーツですが、なんだかんだいってもアマチュア、プロとも競技人口が多いとはいえない。しかし柔道は(だいぶ競技人口は減っているとはいえ)、中学にも普通に部があるスポーツです。そのようなスポーツで、部活動の枠内でこの30年弱で100人を優に超える中学生・高校生らが死亡しているというのはなんとも怖い話です。 いま私は >部活動の枠内で と書きました。一般の町道場での事故を入れればこの数ではすまないわけだし、死ななくても意識不明で寝たきりになっている(元)子どももいるわけで、これまたなんともとんでもない話です。 ところがですよ。こういった話はなかなかマスコミも記事にしないし、世間の動き
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く