最悪で32万人もの死者が想定される南海トラフ巨大地震に備え、政府は救援部隊派遣や物資輸送などの方針を定めた「応急対策活動計画」をまとめた。 日本の大動脈である太平洋ベルト地帯を襲う南海トラフ地震は、国の存亡にかかわる巨大災害になりかねない。 応急活動計画では、被害の全容把握を待たずに人命救助や救援活動を開始することを重視した。 発生から72時間以内に、最大14万人の救援部隊を被災地に派遣する。被災自治体からの要請がなくても、毛布や食料などの必需品を届ける。 東日本大震災を教訓に、国の総力を挙げて人命救助、被害の最小化に取り組む姿勢を示したことを評価したい。 計画は、輸送ルート、救助・消火活動、医療、物資、燃料の5分野で政府や関係機関が取り組むべき行動を時系列で示した。各分野で拠点施設を定めるなど、応急活動の骨格となるものだ。 この計画を実際の災害時に生かすためには骨格に肉付けをし、実効性と
中央防災会議の作業部会は、首都直下地震による甚大な被害想定を新たに公表した。 阪神・淡路大震災と同規模のマグニチュード(M)7・3の地震が都心南部を直撃した場合、建造物の倒壊や火災による死者は最悪で2万3千人にのぼる。経済被害は国家予算に匹敵する約95兆円と推計された。 M7級の首都直下地震は、30年以内の発生確率が70%とされる。日本の政治・経済の中枢機能がまひするような事態は避けなければならない。 最優先の課題は、住宅などの耐震化と火災対策である。 被害想定は平成20年のデータに基づき、東京都の耐震化率を87%として試算した。耐震化率を94%に上げると全壊棟数と死者はほぼ半減し、100%とすれば被害は10分の1程度になる。 火災防止策では、一定の揺れを感知すると電気が止まる「感震ブレーカー」の普及拡大を図るべきだ。同様の対策はガスでは実施済みだが、感震ブレーカーの普及率は数%程度と推定
「終戦の日」と「防災の日」に挟まれたこの時期、戦中・戦後に日本列島を襲った地震災害のことを思い起こしたい。 昭和18年から23年にかけて、死者数が千人を超えるマグニチュード(M)7~8級の地震が立て続けに発生した。 18年鳥取(M7・2、死者1083人)▽19年東南海(M7・9、死者・不明1223人)▽20年三河(M6・8、死者2306人)▽21年南海(M8・0、死者1330人)▽23年福井(M7・1、死者3769人)-の5つである。 これらの地震は戦火と戦後の混乱に埋もれ、震災そのものが十分に伝えられているとは言いがたい。大正12年の関東大震災(M7・9、死者10万5千人)に続く大規模震災といえば、多くの人は平成7年の阪神・淡路大震災(M7・3、死者6434人)を思い浮かべるのではないか。 だが、終戦を挟んだ昭和の地震活動とその被害は、今後の日本の防災にとって極めて重要な教訓をはらんでい
先月半ば、福島第一原発の構内を取材する機会がありました。強い放射線、過酷な収拾作業…。猛暑の中で願います。ロボットの強力な助けがほしい。
火山災害対策 大噴火へ十分な備えが必要だ(5月20日付・読売社説) 火山噴火への危機感が薄れていないか。 内閣府の有識者会議がそう警告し、政府などに火山対策の整備を促す提言をまとめた。 東日本大震災の後、地震や津波対策が注目されているが、有識者会議の提言は、火山にも十分な警戒が必要だと強調している。 もっともな指摘である。 日本には110の火山がある。うち47火山は、今後100年程度の間に噴火する可能性があり、気象庁が地震計などを設置して、監視・観測を続けている。 政府は2008年、47火山の周辺自治体に、避難計画を検討する「火山防災協議会」を地方気象台などと設けるよう求めた。ところが、まだ26火山にしかない。 住民の避難計画があるのは、桜島(鹿児島県)と霧島山(宮崎、鹿児島県)の周辺自治体だけだ。取り組みの加速が急務である。 火山大国の日本では、9万年前に阿蘇山が噴火し、九州全域が溶岩に
東京電力福島第1原子力発電所の炉心溶融事故と水素爆発事故を教訓として、各電力会社が再発防止のために講じるべき改善策を列挙した原発の新安全基準の骨子案が、原子力規制委員会によって公表された。 津波や地震といった自然災害とともに、火災や航空機事故、テロなど人為災害に対する原発の抜本強化策が盛り込まれている。 地震列島である日本の地理的条件や、テロリズムの国際的拡散といった風潮にも対応し、安全性の積み上げに貢献する基準となることを期待したい。 さまざまな想定外に起因する過酷事故でも安全性を失うことがないようにするため、新基準が求める対策は多岐にわたる。 原発の中央制御室が使えなくなった場合のバックアップ用として、原子炉建屋から離れた場所に第2制御室を建造することもその一例だ。各原発で起こり得る最大級の津波を想定し、重要設備を浸水から守るための防潮堤の設置も要求している。 火災対策も強化され、電気
東北電力東通原子力発電所(青森県)の敷地内を走る破砕帯を活断層だとする見解が、原子力規制委員会の専門家調査団によって示された。 東北電力は、これらの破砕帯に活動性はなく、活断層ではないとみなしてきただけに、両者の認識の隔たりは大きい。 規制委は26日に開く2回目の評価会合で東北電力の説明を聞く予定だが、科学的な判断のためには、予断を捨てて謙虚に耳を傾ける姿勢が望まれる。 本来なら20日の第1回評価会合に東北電力を参加させて議論を交わすべきだった。それをすることなく、活断層であるとの結果をまとめた上で、反論を聞くのは公平感に欠ける印象だ。 法律で高い独立性が保証されている規制委には、不断の自省が求められるはずである。規制委の自己規制力が弛緩(しかん)すると、独善的な暴走が始まる可能性があることを指摘しておきたい。 先に行われた日本原子力発電の敦賀原子力発電所での破砕帯調査も、1回限りの審議で
米東海岸を直撃した季節外れのハリケーン「サンディ」は100人を超える死者が出たほかニューヨークを中心に停電など都市機能停止による経済損失が最大500億ドル(約4兆円)と推定される被害をもたらした。 規模の大きさとともに、従来なら考えられないコースをたどり、米国経済の中枢ともいうべき大都市圏を直撃したことが被害を大きくした側面もある。 この点では、地球温暖化の影響も指摘されている。科学的に結論づけることはできないにしても、地球規模で気候が変わってきたことは、わが国でも長引く残暑の厳しさなどから多くの人がうすうす感じ始めている。災害に強い都市基盤整備の観点からも、より詳細な調査や研究が必要だろう。 一方で、今回の教訓は、政治指導者がいち早く危機を認識し、躊躇(ちゅうちょ)せずに必要な行動を取ることの大切さを示してもいた。 サンディが強い温帯低気圧に変わって、ニューヨークの隣のニュージャージー州
「汚染の限界」を示すはずが「汚染の予告」と誤解される可能性を孕(はら)んでいるのではないか。 原子力規制委員会が24日に公表した「放射性物質拡散シミュレーションマップ」を見ての危惧である。 国内の原子力発電所で、東京電力福島第1原発並みの過酷事故などが起きた場合に、住民の避難が必要となる範囲を発電所ごとに地図上で示している。 作成の目的は、各自治体が来年3月までに策定する地域ごとの防災計画作りの参考資料にしてもらうことにある。 マップにはシミュレーションの結果、「避難基準」である7日間で100ミリシーベルト以上の被曝(ひばく)となる範囲が多角形で囲まれるような形で示されている。 規制委は改定中の原子力災害対策指針で、原発からの半径30キロ圏内を事故に備える重点区域としているが、シミュレーションでは関西電力大飯原発や東電の柏崎刈羽原発などで、要避難区域が部分的に30キロを超えている。 そうし
東日本大震災を想定できなかった「地震学の敗北」を踏まえ、日本地震学会は「地震予知」への取り組みを見直すことを柱とする行動計画案をまとめ、公表した。 大地震の前兆現象をとらえ、発生前に警報を出す「予知」について「現在の地震学では非常に困難」であるとし、学会内の「地震予知検討委員会」の名称も変更する。 地震学の現状に即した社会貢献を実現するためには、国民に過度の期待を抱かせる「予知」という言葉を使わない方がよいと判断した。妥当な見解といえる。だが、学会の内向きの議論に終わったのでは意味がない。 地震学者に今、問われているのは「次の巨大地震にどう備え、立ち向かうのか」という指針を示すことだ。それに応えるために、国の地震防災も「予知依存」から脱却しなければならない。 日本の地震防災は、東海地震の予知を前提として昭和53年に施行された大規模地震対策特別措置法(大震法)を中核に構築されてきた。平成7年
原子力防災 実効性ある対策作りを急げ(10月7日付・読売社説) 東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を、今後の原発防災対策に生かさねばならない。 新設の原子力規制委員会が、原発事故時に住民を守るための新たな「原子力災害対策指針」案をまとめた。 規制委は指針を月内に最終決定する方針だ。関係市町村は、これに沿って来年3月までに地域の原子力防災計画を策定する。 最大のポイントは、原発事故に備えた防災対策の重点範囲を従来の「半径8~10キロ圏内」から「30キロ圏内」に拡大した点だ。国際原子力機関(IAEA)が提唱する防災基準に沿っている。 指針案により、防災対策を求められる市町村は、45から135へと急増する。これまで原発の防災とは無縁だった地域もある。 福島第一原発事故では、政府や市町村の避難指示が大混乱し、住民は長時間、転々と移動させられた。食糧供給などがないまま、1週間以上、屋内退避を強い
原発被害賠償 和解による早期救済が大切だ(10月1日付・読売社説) 東京電力福島第一原子力発電所の事故の被害者が、適切かつ迅速に救済されるよう、紛争処理の体制をさらに充実させていくことが大切だ。 今回の原発事故を巡っては、9月下旬までに94万件の賠償申請が東電にあり、そのうち86万件で合意に達した。賠償総額は1兆2400億円に上り、今後も増え続ける。約16万人を避難に追いやった事故の深刻さを物語っている。 賠償金は、政府が立て替え払いしたうえで、東電に請求する仕組みだ。政府の原子力損害賠償紛争審査会が定めた指針が、算定の基準となる。避難に要した交通費などの実費、仕事を失った農家や事業者の損失などが対象だ。 こうした初期の賠償交渉での合意率は高いが、被災者が納得しないケースも少なくない。 東電との交渉がうまく運ばない場合に、仲裁を託されるのが、審査会の下部組織である「原子力損害賠償紛争解決セ
被災地集団移転 官民の知恵と能力を結集せよ(7月31日付・読売社説) 東日本大震災の復興事業は時間との闘いでもある。復興が遅れるほど、故郷を見限り、離れる住民が増えてしまう。 事業別に工程表を示すことなどで、被災者が将来に希望を持って地元に住み続けるようにすることが大切だ。 大震災から1年4か月以上を経て、津波被災地での防災集団移転促進事業がようやく動き出す。最も進捗(しんちょく)が見られる宮城県岩沼市の6集落の移転事業で、移転先の宅地造成が8月5日に始まる。 読売新聞の7月上旬の調査によると、岩手、宮城、福島3県の26市町村で約2万6000戸が集団移転の対象だが、このうち政府の同意を取り付け、事業化が決まったのは22%にとどまっている。 住民の合意形成に時間を要したり、自治体の技術系職員の不足から移転先の土地確保などの手続きが遅れたりしているためだ。 昨年度の復興関連予算約15兆円のうち
地震の研究 観測強化を防災対策に生かせ(7月31日付・読売社説) 国民の生命や財産を守るために、今度こそ、有効な研究を進めたい。 政府の地震調査研究推進本部(本部長・平野文部科学相)が、地震や津波の調査研究に関する「基本方針」の見直し案をまとめた。 推進本部は、防災・減災対策の一環として、どこで、どんな地震が起こるかを調査、評価している。基本方針は、その手法や関係府省の分担を定めたものだ。 見直し案は超巨大地震の発生を前提に、海底に地震計を増設するなど観測網の強化を打ち出した。各地の揺れや津波が、どれほど大きくなるかを、あらかじめ見積もれるようにするのが目的だ。 速報の予測技術の改良や高度化にも取り組む。東日本大震災では当初、気象庁が津波の高さを低く予報したり、余震の緊急地震速報が誤ったりした。 マグニチュード9だった大震災の教訓を踏まえれば、妥当な内容と言えよう。 現行の基本方針は200
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