自民党の安倍晋三総裁がオバマ米大統領と電話会談し、東アジア情勢に関して「日本もパワーバランスが崩れないよう責任を果たしたい」との考えを伝えた。 国際社会の平和と安定のため貢献しようとする姿勢を評価したい。だが、日本が自ら防衛力を強化し、集団的自衛権の行使容認に踏み込まなければ、責任を果たすことにはならない。 来年1月にも訪米して首脳会談を行うことでも合意したが、それまでに新政権が日米同盟を立て直すため、具体的な方向性を示すことを期待したい。 安倍氏は北朝鮮の長距離弾道ミサイルへの対応で「緊密に連携したい」と大統領に語った。それには米国を目標に発射されたミサイルを日本が迎撃できるよう、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈を変更する必要がある。 「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の見直しで、日米が中国の海洋進出に対応できる内容に改める作業も急がれる。いずれも待ったなしだ。 環太平洋戦略
公示された衆院選の大きな争点は景気対策だ。景気が後退局面に入る中で、今求められているのは、本格的な補正予算の編成と日本経済の活性化につなげる大胆な規制緩和である。 にもかかわらず、野田佳彦政権が閣議決定した第2弾の経済対策はあまりに力不足だ。選挙後の新政権は直ちに新たな経済対策を決めて実行に移す必要がある。各党はそのための経済再生シナリオを競い合ってもらいたい。 政府が先月30日に決めた経済対策は、今年度予算の予備費から8800億円を投じる。東日本大震災の復興事業に加え、来年度予算の概算要求に盛り込んだ「日本再生戦略」の一部前倒しが中心だが、予算規模も小さく、全体の景気浮揚効果は極めて限定的だ。 国内総生産(GDP)の押し上げ効果も0・2%強(内閣府)にすぎない。10月に決めた経済対策第1弾の財政支出も約4千億円にとどまった。当時は赤字国債の発行に必要な特例公債法成立前で、国会承認が不要な
三菱重と日立 攻めの統合で世界3強目指せ(12月3日付・読売社説) 成長するアジアなどの新興国市場を狙った攻めの経営統合だ。高い技術力を持つ日本企業が世界で勝ち残りを目指すモデルと言えよう。 三菱重工業と日立製作所が、2014年1月をメドにタービンなどの火力発電事業を統合し、新会社を設立することで合意した。 地熱発電や燃料電池事業なども統合する方針で、売上高が1兆円超に上る巨大な電力インフラ会社が誕生する意義は大きい。 三菱重工の大宮英明社長は記者会見で、「日本企業同士の消耗戦ではなく、海外で戦う」と述べ、中西宏明・日立製作所社長は「最強の組み合わせ」と強調した。 名門企業の両社に大胆な決断を促したのは、厳しい経営環境に対する危機感だろう。 東京電力福島第一原子力発電所事故後、国内では当面、原発の新増設が望めず、原子力事業を主力とする両社に逆風が吹く。重要な顧客だった電力会社の経営が悪化し
三菱重工業と日立製作所が火力発電を中心とした発電事業を統合することで合意した。平成26年1月をめどに新会社を設立する。 国内外でしのぎを削り、長く日本のものづくりの中核を担ってきた両社が手を握る意味は大きい。しかも、目的は世界で戦う力を手に入れるという明確なものだ。経営陣の決断を評価したい。 国内の電力会社の設備投資額は減少が続き、火力などの発電事業が生き残るには海外での事業拡大は不可避だ。電力や交通などのインフラ輸出は、人口減などで国内市場が縮小する日本経済再生の大きな柱と位置づけられ、政府も力を入れている。 しかし、世界の発電事業では、事業売上高約2兆9千億円の独シーメンスと、同約2兆5千億円の米ゼネラル・エレクトリック(GE)が2強として圧倒的な力を持っているのが現実だ。一方で、中国、韓国、インドなどの新興勢力が急速に力をつけてきている。 日本メーカーが個別で戦うには極めて厳しい環境
産業界が「悲鳴」を上げている。全国に広がる電力料金値上げの動きのためだ。関西電力と九州電力が引き上げを申請し、東北電力や四国電力なども追随する。 値上げの理由は原子力発電所の再稼働が進まず、これに代わる火力発電の燃料費が嵩(かさ)んでいるからだ。中でも産業用は家庭用に比べて値上げ幅が約14~19%と大きく、影響が深刻だ。このまま原発を再稼働できなければ追加値上げも避けられない。 工場などが海外に移転し、国内の雇用が失われる産業空洞化が一気に加速してしまう。政府は日本企業を救う視点に立ち、安価で安定的に電力を確保できる原発の早期再稼働を検討すべきだ。 関電と九電は来春、家庭用で約12%と8・5%の値上げをそれぞれ目指している。内部留保の取り崩しや経費削減では対応し切れないと、申請に踏み切った。 今年上期には原発を持つ9電力会社のうち北陸電力を除く8社が赤字となった。修繕費などの削減が続けば、
金融政策 デフレ脱却の具体策で競え(11月22日付・読売社説) 衆院選では、各党のデフレ克服策が重要な争点となる。本格的な論戦の前に、自民党の安倍総裁が投じた“一石”が波紋を広げている。 安倍氏は、17日の熊本市内での講演で、無制限の金融緩和を日銀に求めるとともに、公共事業のために発行する建設国債については「いずれは日銀に全部買ってもらう」などと述べた。 これには野田首相が「日銀に国債を直接引き受けさせるやり方は禁じ手だ」と指摘するなど、政府などから批判が相次いだ。 確かに、いくらでも紙幣を発行できる日銀に、国債の直接買い取りを求めたのなら問題だ。戦時中のように国債増発に歯止めがかからなくなり、財政規律が崩壊して超インフレが起きる恐れが強い。 だが、安倍氏は同時に、通常の金融調節手法である「買いオペ」で購入するとも述べていた。21日の記者会見では「直接買い取りとは言っていない」と否定した。
自民党の安倍晋三総裁が唱える経済再生策が波紋を広げている。株価が上昇、円高是正も進む一方で、民主党や日銀に加え、財界や市場関係者から懸念も出ている。 市場が安倍氏発言を好感した背景には、脱デフレの糸口すら示せなかった民主党政権への不満、不信がある。衆院選が経済を覆う重苦しさを払う契機になるとの期待があり、氏の発言にその力を感じたのかもしれない。 経済再生への有権者の関心は高い。安倍氏発言を軸に脱デフレ、金融政策と政府のあり方などで各党の活発な議論を期待したい。 安倍氏は日銀に物価上昇率2~3%のインフレ目標設定と無制限の金融緩和を求めた。同時に公共投資中心の財政出動や「建設国債の日銀による全額買い取り」を主張した。日銀法も改正し、日銀と政府の連携強化を図るという。 日銀は物価上昇1%をめざし、資金を市中に流すため国債などを購入する91兆円の基金を設けている。金融機関の融資増分は低利で無制限
「TPP解散」 首相は交渉参加の旗を掲げよ(11月13日付・読売社説) 自由貿易を推進し、日本の成長に弾みをつけることが重要だ。野田首相は環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を決断すべきである。 首相が衆院予算委員会で、米国が主導しているTPPについて、民主党の次期衆院選政権公約(マニフェスト)に盛り込む考えを改めて示し、「党内で議論を進めていく」と述べた。 首相が「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と表明してから1年が過ぎた。一段の市場開放に備えた農業の国際競争力強化策などの環境整備もしないまま、参加の決断を先送りしてきたのは問題である。 ただ、ここに来て、TPP参加によってアジアの活力を取り込み、日本の成長加速を目指す姿勢を鮮明にする意味は大きい。 年末から年始の可能性がある次期衆院選はTPPが争点となろう。活発な論議が求められる。 民主党内には依然、反対論が強く、首相
電機大手赤字 大胆な成長戦略で復活目指せ(11月2日付・読売社説) 電機大手の業績悪化に歯止めがかからない。韓国企業などとの競争は激しく、復活に向けた戦略立て直しが急務だ。 パナソニックは、2013年3月期連結決算の業績予想を下方修正し、税引き後利益が7650億円の赤字になると発表した。当初、500億円の黒字を見込んでいたが、前期の巨額赤字に匹敵する深刻な事態である。 津賀一宏社長は、「デジタル家電で負け組となっている。構造改革を実施しても一時的に良くなるだけで普通の状態でない」と述べた。発言に込めた意味は重い。 巨額赤字の主因は、薄型テレビ、デジタルカメラ、携帯電話などの本業が低迷したことだ。 パナソニックは09年に三洋電機を買収した。テレビ事業に代わる中核として太陽電池やリチウムイオン電池事業に期待した戦略だったが、誤算に終わった。 三洋買収による巨額投資を事実上、失敗と認め、今期中に
電力会社が相次ぎ電力料金値上げの検討に入った。原子力発電所の停止で火力発電所の燃料費がかさんでいるためだ。 料金値上げは、国民生活や産業などに打撃を与える。電力会社の徹底したリストラが前提とならなければならない。 だが、それだけで値上げを抑制するのは無理だ。電力をできるだけ安価に、かつ安定的に供給するには、安全性が確認された原発を有力電源として活用することが欠かせない。 今なすべきは、原発再稼働に向けた手順を早期に確立し、円滑な運転再開につなげることだ。それが政府の責務である。 関西、九州の両電力は、値上げの時期や幅を今後、検討する。北海道と東北、四国の3電力も、原発再稼働の見通しをにらみつつ最終判断する。来春にも実施される値上げの幅は家庭用で1割、産業用で2割程度が有力という。 国内では現在、関電の大飯原発2基だけが稼働中だ。電力需要の3割を賄ってきた原発の運転停止に伴い、各社とも火力発
電気自動車 不毛な規格争いは混乱を招く(10月29日付・読売社説) 電気自動車(EV)の充電規格を巡り、日本と欧米メーカーの対立が決定的になった。 日本方式の国際標準化を狙った日本勢には痛手だ。EVの本格的な普及を目指し、戦略の見直しを迫られよう。 EVは走行中に二酸化炭素(CO2)を出さない究極のエコカーとして期待される。ただ、1回のフル充電で走行できる距離が約200キロ・メートルと短いのが難点だ。 搭載するリチウムイオン電池の性能と、急速に充電できる技術を各社が競っている。 「チャデモ方式」と言われるEVの急速充電器を実用化したのはEVを量産している日産自動車や三菱自動車など日本の業界だ。欧米にも採用を呼びかけた。 しかし、米国の業界団体は、米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)などが推進する「コンボ方式」という別の規格の採用を決めた。 双方で使われる充電コネクタ
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