長谷部恭男氏の空気を読まない発言が大反響を呼んで、国会を混乱させている。野党は彼を「平和主義者」と評価しているが、本書を読めば明らかなように、彼は単純な第9条原理主義者ではない。 私の印象では、彼は実定法の条文よりその背後にある政治的な文脈を重視するポストモダン法学に近い。自衛隊についても「違憲」とは断定せず、運用でカバーすればいいというが、集団的自衛権については「日本の立場から見てどんなにおかしな軍事行動でも、アメリカに付き合わざるを得なくなります」という運用上の問題を指摘している。 こういう立場からみると、憲法を改正するかどうかは最大の問題ではない。法律は条文という形の政治的利害の表現にすぎないので、それが政治的に正しい場合は厳守され、正しくない場合は空文化して第9条のようになる。だから解釈改憲で慎重に運用を変えればいいのだ。 とはいっても、長谷部氏もいうように「違憲であるはずのものを