職場での不正行為は、明らかな悪意があって始まるものではない。むしろ、最初は「ほんの端数を切り上げただけ」といった小さな無分別から始まるという。実験によって、人の倫理観が失われていくプロセスと不正防止の手がかりが示された。『失敗は「そこ」からはじまる』著者ジーノらの提言。 元NASDAQ会長バーナード・マドフの犯罪が明らかになる、何年も前のことだ。マドフのクライアントの秘書が横領で逮捕された時に、彼は自分の秘書にこう言った。「最初はほんのわずかな金額、たぶん数百ドル、数千ドル程度の着服から始まる。それに慣れてしまうと、知らないうちに雪だるま式に増えていて大事に発展するってわけさ」 そのマドフが起こした巨額詐欺事件も、比較的少額の損失を隠すための虚偽の報告に端を発したことが、いまでは知られている。その規模は15年をかけて徐々に拡大し、ついに650億ドルに膨れ上がった。その間、規制当局も投資家さ