本書は長大な『21世紀の資本』を理解するための最小限の知識を解説したもので、すべての論点をカバーしていません。ピケティの本には膨大なデータが出ていますが、その説明は独特で標準的な経済理論とは違うので、経済学の知識がある読者にはかえってわかりにくいと思います。ここでは既存の成長理論との関連を解説しました。 資本主義の根本的矛盾 ピケティの結論は、最後の「結論」に要約されています。ピケティの主張は次の資本主義の根本的矛盾と呼ばれる不等式で表現されています。 r>g ここでrは資本収益率、gは国民所得(GDP+海外収益)の実質成長率です。ピケティは「資本」という言葉を広い意味で使っているので、rは株式の場合は株主資本利益率(ROE)、土地などの固定資産の場合は賃貸料、金融資産の場合は金利で、その平均をとったものです。 ここで疑問なのは、rがつねにgより大きくなる必然性はどこにあるのかということで
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